始まりの終わり

潜次元艦サブディメンジョン? こんなコロニーの空間内に『浮上』してくるなんて!」

 急展開する状況に付いていけない俺の目の前のモニターから二つの照準固定ロック・オン表示が消える。ディスプレイの部分拡大で確かめると、件のノービス二機が戦場を離脱してコロニーに空いた穴から真空空間に抜け出していくのが見えた。不利を悟ってこの場を離脱したようだ。

『メーデー、メーデー、稼働中のX68k二号機、応答せよ。パイロットは至急所属を申告せよ』

 実戦の緊張から解き放たれてため息をつくと、緊急通信からやけに舌っ足らずな声が聞こえてきた。

「こちらホツマ教星系軍候補生ID:65TPS0634サカモト・タケル」

 問われるまま応答すると、舌っ足らずな声はやけに時代がかった口調で返事を返してきた。

『候補生じゃと? どういう成り行きでX68kのプロテクトを破壊デストロイした? 否、今それを問うても詮無きことじゃな。乗ってしまったものは仕方あるまい。ひとまず当艦”ミケランジェロ”に帰投せよ』

「……了解」

 スティックとスロットルを潜次元艦に向けながら、俺はなんとなくこの先の自分の運命を予想していた。

(退屈だったけど穏やかだった幼い日々はもう終わり、ってか……)

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