第三幕 サムライガールは企業配信者に狙われる!

▼▽▼ 企業のトップクラス配信者 ▼▽▼

 インフィニテック・グローバル(Infinitech Global)。


 エクシオン・ダイナミクス(Exion Dynamics)。


 アクセルコーポ(Axel Corp)。


 世界に名高い三大企業。ダンジョンが世界に現れて国家が事実上崩壊し、それに代わるように世界を納めている組織だ。


 ダンジョンという未知な存在から物資を取り入れ、それらを用いて世界を運営している。ダンジョンがあるからこそ三大企業は成立していると言っても過言ではない。


 そしてそんなダンジョンを糧とした三大企業のセクションの中には『ダンジョン配信』というのがある。ダンジョン内の世界を配信するエンタメだ。戦闘あり。罠あり。地球では見られない景観あり。


 座していては得られない冒険譚を、部屋に居ながらに味わう事が出来るのだ。時空嵐で世界が分断されて旅行できる範囲が狭まったこともあり、これらの配信は爆発的なブームとなった。


 もちろん、ダンジョンは観光地ではない。むしろ油断すれば死に至る危険な場所だ。お気に入りの配信者が無残な死を遂げることもある。そのショックで立ち直れなくなるものもいる。残酷なシーンは情緒に悪いという声も後を絶たない。


 それでもダンジョン配信は廃れなかった。それほどまでに人々はダンジョンという存在に引き込まれていた。未知なる存在。未知なる世界。それに惹かれ、そして希望を見ていた。


 配信者には大きく二種類存在する。企業配信者と、そうでない無所属の配信者だ。


 前者は三大企業のいずれかに属している配信者だ。企業内で配信のために企画を立ち上げてチームで配信する形もあれば、優秀な配信者を企業がスカウトする形もある。


 企業配信者はスキルや装備などを企業からサポートされており、ほとんどの有名配信者はいずれかの企業に属している。


 そして後者は企業に属していない配信者全般。個人で配信している者達だ。企業配信者に比べて装備も乏しく、スキルシステムを持っているものなどごく一部。予算も活動規模も企業配信者など比べるべくもない。


 ……稀にアトリのような突出した配信者も現れるのだが、それは例外中の例外。


 企業のサポートを受けて配信を行う企業配信者。その中でもトップクラスと言われる配信者は、現在下層をメインに活動していた。


 三大企業の配信者。それぞれのトップクラス。


 インフィニティック・グローバルの『ぴあ&じぇーろ』。


 エクシオン・ダイナミクスの『シカシーカー』。


 アクセルコーポの『火雌冷怨カメレオン特攻隊』。


 アトリの下層突破に企業が出遅れたと慌てたのか、これらトップ配信者達の下層探索が大々的にピックアップされる。サポートにも力が入っているのか、装備もスキルも充実している。


 下層探索に力を入れると同時に、彼らトップ配信者はこの流れを生んだアトリに様々な想いを抱いていた。


「あのサムライの刀凄いね ぴあ!」

「どっちの方が切れ味が鋭いかな? じぇーろ!」


 アトリの刀技に興味を抱くぴあ&じぇーろ。


「興味深い。彼女は鹿わたし枝角アントラーとしてふさわしい存在だ」


 アトリをスカウトしようとするシカシーカー。


「最強? オレ以外がそれを名乗るなんざ許しておけるか!」


 アトリの強さに挑もうとする火雌冷怨カメレオン特攻隊。


「むぅ。風邪か……?」


 アトリは妙な寒気を抱いて、身震いした。

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