雨の日、洗濯を待ちながら(8)
そこで、
「それはそうだけど」
と、不満そうなのを表に出して、言う。
「そんなこと言ったら、
空は青いのに宇宙は黒い、という短歌が負けたのが動かないとしても、三戦二勝。
勝率〇パーセントと四捨五入六七パーセントで、どうして六七パーセントのほうが「そんなのだから負ける」と言われなければならない?
「ふふん」
愛が!
愛が、ふふん、と笑った。
そういう笑いかたをしても、どことなく品があるのが、この子だな。
どことなく 品があるのが この子だな
いや。
嘲ったのとは違うか。
「そこが、先生の反省点なんだって」
愛が愉快そうに言う。
やっぱり……。
……嘲った?
「先生は、
「思って」のあとのためらいは、「思っておられる」と言うかどうか迷ったんだな、ということが、千枝美には伝わる。
そうだよ。
隣にいるのに気もちが伝わらない、なんていうことはなくて。
千枝美と愛なら、ちゃんと伝わるのだ!
愛は、かわいいから。
千枝美が、愛のかわいさを理解しているから!
「でも」
と、千枝美がそのかわいい愛に疑問を提出する。
「そんな社会批判なんて、それこそ、日本文学の伝統と違うじゃない?」
「いや」
愛はこんどは優しく笑う。
「日本文学の伝統は社会批判だ、っていうのが先生の説。っていうか、先生の先生の、
だまされてはいけない!
愛のかわいさにはだまされてもいいが。
この「ぱらぱら」は、けっこうまじめに、お昼ご飯のひまも惜しんでちゃんと読んでいる。
そういう子だ。
「『源氏物語』も、『
「聴いてない」
ひと言で切り捨てる。
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