雨の日、洗濯を待ちながら(6)
「
そういうばあい、切り返す方法はある。
「じゃあ、それは何?」ときき返すことだ。
「愛はどう答えたの?」
「それはあるけど、でも、それだと、
ま、そりゃそうか、と思う。
愛は、そこで短くことばを切ってから、続ける。
「で、
優と樹理。
もしかして、きっぱりはっきり言うキャラどうしで、馬が合うのだろうか?
「それで、最後、
道村尊子先輩。
「いや。最後に部長対決とかにするからプライドのぶつかり合いになったんで」
と
「道村先輩をもっと先に出して、最後に
たとえば、パンダ短歌のどれかと道村先輩の短歌なら、道村先輩が勝っていただろう。東子先輩のに朝穂の短歌が勝つ確率も高そうだ。
「あれ、部長の自信作だったみたいだから」
愛が、ふふっと笑う。
「それが、東子さんのパロディー短歌に負けたから、ほんとくやしかったみたいだね」
だから、泣いた。
たしか、あのとき、愛はその道村尊子先輩の歌のほうに入れたのだった。
千枝美はその尊子先輩を落とした。
千英が何を考えたかはわからないけど、千枝美は、東子先輩の短歌がいいから、ではなく、尊子先輩の歌を落としたくて、東子先輩に入れた。
その結果、尊子先輩は負けた。
そこで、千枝美は自分の判断について説明することにした。
「だって、つくりごとすぎるよ。ほんとに肌の触れてるひとの気もちがわからなくてもどかしい思いをしたことあるの、って。あるかも知れないけど、さ」
尊子先輩は一学年上だ。いまの千枝美には想像できないけど、高校生女子の一年、何が起こるかわからない。
「そういうのは伝わってこなくて。だとすると、遠い国のひとのことをわからなければ、みたいなところも、うそっぽく感じちゃうじゃない? だから落とした」
「ま」
と、愛は、鼻からふうっと息を漏らした。
「千枝美らしい判断だね」
「はい?」
いま言ったことが、とくに自分らしいとは、千枝美は思わなかった。
だから
「どこが?」
ときく。
愛は、いっぱいに笑った。
いつも、どこかに「笑っていない部分」を残したあいまいな笑いが、この子の持ち味なのに!
「優等生に厳しいところ」
「ああ」
千枝美も笑った。
「そうかも」
この進学校の優等生学校で、千枝美は、たしかにその優等生っぽさに乗り切れていない。
爆発物の実験とかをやろうと言い出したのも、もしかすると、優等生の子にはそんなのはできまい、と思っていたからかも知れない。
樹理と相性が悪いのも、たぶん、それ。
「で、さ」
愛は、カップを傾けてアップルティーをぜんぶ飲んでしまって、自分のカップを机に置いた。
「まあ。樹理が解説してくれたんだけどさ。
「へっ?」
「日陰者」って……。
……何?
愛が続ける。
「その二人が勝って、大人も高校生も横一線で参加する全国的な短歌会で
「しかも、まあ」
と、千枝美が補ってあげる。
うう。なんて親切な千枝美!
……ってほどでもないか。
「相手はお遊び短歌だし」
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