第七番 穂積晶 対 稲部朝穂
次も、その「若い大人の女」対「若い高校生の少女」の対決になるらしい。
なんか。
疲れる……。
* * *
【古典文芸部】
パンを食べ団子も食べたらパンダだよ花より団子パンよりパンダ
* * *
【
青白く
ともゑ(
* * *
パンダか!
パンダ、もう終わったと思ってたんだが。
「「花より団子」が、見て楽しむものよりも食べるものが優先、っていうのに対して、それでも、パンを食べるよりもパンダを見に行くほうが優先、って、その対比がおもしろい、ってことかな?」
「まあ」
と
「エンゲル係数的な、食べるもの最優先、って価値観と、パンはいつでも食べられるけどパンダをみる機会は非常に限られてる、って、
おいっ!
そんなにすごい歌なのか、これ?
「ともゑさんは、青と白がキーワードなのかな?」
愛が話を稲部朝穂の短歌に向ける。
「キーワードというか、キーになる色? さっきも、青、白と黒、って対比でしたし」
と補足説明。
稲部朝穂が小さく
「ああ、そうなんだ」
と言う。とくに意識はしていなかったみたいだ。
そのあと、千英も愛も何も言わない。
言いたいことはあった。
どうして、こんなに「生きている女」のオーラにあふれてる朝穂が、こんなに、こんなに痛い自殺願望みたいな短歌を作るのか。
でも、それは、口に出してはいけない。
そう思った。
「じゃあ」
と、千枝美はのどが詰まる感じを感じながら言う。
「パンダと花より団子の歌と、青白いナイフの歌で、どちらでしょうか。判定、行きましょう」
* * *
【判定】
愛 晶(古典文芸部)
千英 晶(古典文芸部)
千枝美 ともゑ(八重垣会)
えーっ?
幽霊部員志願の千英以外の全員、千枝美と、愛と、晶と、朝穂が、あっ、と小さい声を立てた。
いや。晶と朝穂は声は立てなかったが、晶は驚いたように顔を上げ、朝穂も顔を上げて唇を少しだけ開けた。
パンダ短歌、初の勝利!
いや。
八重垣会のエース、稲部朝穂!
まさかの、まさかの二連敗!
これは……。
パンダ短歌を作ってばらまいた古典文芸部に格の違いを見せつけ、恥をかかせて懲らしめる。
その目的が達成できてないではないか。
まずい……。
そのとき、愛がすっと手を挙げた。
「あ、はい」
短歌の作者は、ペンネームまたは名まえ呼びなので、愛さんと呼ぶか、
「はい」
と、髪を軽く振ってから、愛が話し始めた。
「ともゑさんの短歌、とても優れてると思うんです。でも、青白くて、緻密な
と目を伏せる。
「うん」
と、作者の朝穂はうなずいた。
「わかった」
……作者と直接にことばを交わしちゃいけなかったのでは?
でも。
そうなんだ。
一票入れるのも怖いぐらいの短歌、ということで、実質、勝利?
しかし、その数字は残らない。
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