第16話 VSカメレオン
『気に入ってもらえたかな?』
「!? 誰だ!」
空太は辺りを見回すが、誰もいない。声は校舎にある放送用のスピーカーから聞こえていた。
『探しても無駄だ。私はそこにいないからな』
「何者だ! 何が目的だ!」
空太は声の主に質問する。しかし返ってきた言葉は予想外の言葉だった。
『我々は貴様――蒼井空太の抹殺を望んでいる』
「は? 俺の抹殺だと? 訳が分からないぞ?」
『貴様は知らなくてもいい。もうすぐそこのカメレオンによって死ぬのだからな』
「なんだと? この怪物はお前が造ったのか?」
『造ったのは我々の組織だ』
「組織だと? ますます分からないぞ?」
『お喋りはここまでだ。我々も時間がないのでな。なに、最期は看取ってやる。モニター越しだがな』
「お、おい! まだ聞きたいことが――」
『精々足掻くんだな。それでは、良い最期を』
最後にそう言い残すと、もう返事が来ることはなかった。
『警告。カメレオンが透明化します』
アンノウンがそう言うとカメレオンの身体が段々と消えていく。だが、影だけは消せていなかった。
『提案。サーモグラフィアプリを使い、敵の位置を把握してください』
「そうか、その手があったか!」
空太はスマホのアプリ一覧からサーモグラフィアプリを起動する。そして影がある方にスマホを向けると思った通り、カメレオンのいる所が真っ赤になっていた。これならいける。
「焔! カメレオンの場所を教えるから、ヤツを倒してくれ!」
「ああ! 任せろ! 少し本気をだす!」
焔は日本刀を鞘から抜くと真正面に構える。そして目を瞑る――
「へ? 焔? 大丈夫か?」
焔は目を閉じたまま答える。
「ああ! 大丈夫だ! カメレオンの居場所を頼む!」
「分かった!」
空太はスマホの画面を確認する。カメレオンは丁度、焔の真正面にいた。
「焔! お前の丁度真正面にいるぞ!」
しかし焔はまだ目を閉じたままだ。
「焔! どうした!?」
すると焔は何かを呟く。
「――我が剣に宿りしは新撰組一番隊組長。沖田総司!」
刹那。焔が目の前から消えた。次の瞬間にはカメレオンの真上にいた。
「我が剣技! その身に刻め! 三段突き!!」
焔が目にも止まらぬ速さで三回カメレオンがいる場所に攻撃をした。
一瞬の静寂の後、カメレオンの姿が徐々に露わになった。その姿が完全に見えた時にはカメレオンは倒れていた。
モニターで一部始終を見ていた職員達は言葉を失っていた。カメレオンが、組織が開発したカメレオンがあっさりと倒されてしまったのだから。局長は驚愕していたが、すぐに職員に状況を確認する。
「解析結果は!? 出ているだろう!」
「は、はい! 局長! 解析結果は・・・・・・能力者です! 神宮寺焔は能力者です!」
「なんだと!?」
局長は信じられなかった。だがまだ確認することがある。
「神宮寺焔のランクは?」
「ランクは・・・・・・Aランクです!」
「Aランクだと!? 上位能力者か!?」
「はい! 上位能力者です!」
「状況は!? 二人はどうなった!?」
「二人は・・・・・・エレベーターに乗り込みました!」
モニターを見ると、二人はエレベーターに乗るところだった。時間は午後4時44分44秒だった。
「手遅れだ・・・・・・」
エレベーターに乗られてしまってはもう組織にできることは何もない。局長は大きなため息をついた。
「今回は見逃してやる、蒼井空太。しかし、我々は諦めない」
局長はモニターの電源を消すと、パソコンだらけの部屋を後にするのだった。
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