第15話 カメレオン

 ヒュウウウウウ――


 生ぬるい風とどこまでも広がる不気味な夕焼け。空太と焔は最初に異界に迷い込んだ原因――エレベーターの前にいた。現在時刻は午後4時。条件が揃う時間まであと44分44秒ある。

「あと40分くらい時間があるね」

「そうだな、空太はスマホを持っているから、時間の確認ができて助かる。上手くいけば正確にエレベーターに乗ることができそうだ」

 この異界には時計があるものの一切動いていないので、時間の確認が取れなかったのだが、スマホがあるおかげで、時間だけは正確に知ることができる。

「空太は、無事に戻れたらどうする?」

 焔が急に聞いてきた。

「そうだな~、学園祭の続きを楽しみたいかな~。焔は?」

「私か? 私は空太と学園祭デートの途中だったからな。無事に戻れたらデート再開と行きたいところだな」

「そ、そうだね。学園祭デートの途中だったよね。そうしよう」

「決まりだな」

 空太と焔はグータッチをすると、エレベーターの前に立つ。スマホの時刻は午後4時30分を表示していた。あと14分ある――そう思っていた時。


『警告。未知の脅威が接近中。』

 アンノウンが突然警告を発してきた。


「接近中・・・・・・? なにもいないけど?」

 辺りを見回すが、脅威となりそうなものは何もない。


『警告。未知の脅威が接近中。間もなく攻撃が来ます』

「いやいや! なにもいないけど!?」

 まさか、アンノウンが間違えることがあるのか。そんなことを思っていたその時。


「空太! 危ない!」

 焔が空太に向かって突っ込む。空太の立っていた地面に大きな穴が開いた。焔が身を挺して守ってくれたのだ。

「な、なんなんだ? 何が起きてる?」

 何が起きたのか。空太の立っていた地面は大きく抉られていた。もしあのままだったら死んでいただろう。

「どこだ? どこにいる?」

 焔も辺りを見回すが、なにもいない。しかし、違和感に気づく。

「影が動いている・・・・・・?」

 地面をよく見ると影が出現していた。それもかなり大きい。しかし影以外はなにも見えない。


『警告。次の攻撃が来ます。ターゲットは空太様です』

「俺かよ! なんでだよ!?」

 姿の見えない敵である以上、どう避ければいいのか? そう思った空太だったが、焔が機転を利かす。


「空太! スマホを使え! 影に向かってカメラのフラッシュを浴びせるんだ!」

「わ、分かった」

 空太はスマホを取り出し、カメラを起動する。フラッシュをオンにして大きな影に向かってスマホを構える。

「行くぞ!」


 カシャカシャカシャ!


「グルアアアアアアッ!?」


 カメラのフラッシュを影に向かって浴びせた途端、唸り声が響いた。すると、影の周りの空間が歪み出した。見えなかったナニカは徐々にその全貌を見せる。

 全身緑色の皮膚、目はキョロキョロと動いており、手は吸盤のような構造になっている。この特徴が当てはまる生き物は――


「・・・・・・カメレオン?」


 空太達の前に姿を現したのは、爬虫類で有名なカメレオンだった。しかし

大きさが違う、ゆうに4~5メートルはある。

 その大きさに空太が圧倒されていると、焔から声がかかる。

「空太! 今ならカメラでアンノウンに解析してもらえるぞ!」

「了解! 今やる!」

 空太はスマホのカメラをカメレオンに向けて構え、撮影した。


『撮影を確認・・・・・・データ照合中・・・・完了』


 解析が終わり、スマホの画面を見る。そこに表示されていたのは――


『カメレオン』


 やはりカメレオンだった。しかし特徴の項目を見てみると違和感に気づく。


『特徴

・自らの皮膚を光学迷彩並みに変化させることができる

・人為的に造られた生き物

・対人生物。通称カメレオン』


「人為的に造られた? どういうこだ?」

 空太はわけがわからなかった。こんな大きさの生き物を造ることが可能なのか? だとしたら誰が、なんの為にやっているのか今の空太には知るすべがない。


『気に入ってもらえたかな?』


「!? 誰だ!」

 空太は辺りを見回すが、誰もいない。声は校舎にある放送用のスピーカーから聞こえていた。


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