第14話 脱出方法

「神宮寺焔について何か分かったか?」

 局長は煙草に火をつけると、職員に問う。

「申し訳ございません。現状ではなにも分かっておりません」

「なんだと? ちゃんと調べてるのか?」

 局長は煙草の煙を吐き出すと、苛立ちながら、職員に聞く。

「も、申し訳ございません! モニタリングはしているのですが、これといっておかしい所はなく手詰まりの状況です」

「そうか・・・・・・現在の二人の位置は?」

「はい。現在、蒼井空太、神宮寺焔の両名は図書室を後にしております」

「まずいな。これ以上ヒントを得られてしまうと異界から脱出されてしまう・・・・・・・やむを得んか、しかし・・・・・・」

 局長は手を組み何かを考えているようだ。

「局長? この後はいかがなさいますか?」

 局長は長考していたが、やがて決心した表情になると職員に告げる。

「やむを得ん。を出せ」

・・・・・・ですか? あれはまだ実験段階のはずですが?」

「構わん。我々の目的は蒼井空太の抹殺だ。使えるものはなんでも使う」

「・・・・・・かしこまりました。すぐに手配致します」

 職員はパソコンに向かうとカタカタとタイピングを始める。数秒もしないうちに局長の方を向く。

「準備が完了致しました。まもなく異界にカメレオンが投入されます」

「それでいい。ここからは私もモニタリングに参加する。蒼井空太の最期を見届けてやらねばな」

 局長は二本目の煙草に火をつける。カメレオンの投入により、蒼井空太は抹殺される。その瞬間に立ち会うために。

「今度こそ、終わりだ。蒼井空太」

 局長は煙草の煙を吐き出すと、モニタリングを開始するのだった・・・・・・


「焔、次はどこに行くの?」

「保健室だ」

 空太と焔は図書室を出た後、保健室へと向かっていた。

「でも焔。どうして保健室なの? もっとほかの場所を探した方がいいんじゃない?」

「いや、恐らく紙切れを残したものは負傷している。応急処置をするために、保健室に行くはずだ」

 確かに、図書室で見た紙切れは途中で途切れていたし、血もついていた。ヒントを残してくれた人物が負傷したと考えるのは自然なことだ。

「着いたぞ」

 空太と焔は保健室に到着した。音を立てないように静かに扉を開ける。中はやはり綺麗だった。

「あっ、紙切れだ」

 空太が声をあげる。焔の言う通り保健室に紙切れはあった。置かれていたのは救急箱の上だ。


『異界に迷い込んだ人へ』


『いや~参った参った。図書室で調べ物をしていたらナニカに急に襲われてね』


『字が汚くなってるのは許してくれよ? 


『今は左手で書いてる。多分これが最後の手掛かりになるかな』


『結論から言うね? 異界の脱出方法は――


『午後の4時44分44秒に戻りたい階数のボタンを押すだけだ。簡単だろ?』


『問題は、私に襲い掛かってきたナニカなんだよね~』


『ナニカは脱出の時間が近くなると、エレベーター付近をうろついてるらしい』


『私には倒す武器も道具もない。そして疲れた。だからここで寝ようと思う』


『もしこれを見ている人がいたら、私の生死は察してくれよ?』


『そして、なんとしてもここから脱出してほしい。後は任せた。それじゃあおやすみ。』


「「・・・・・・」」

 空太と焔はしばらく声が出なかった。異界に迷い込んだ人の為にここまで手掛かりを残してくれたのに。これを書いた人は――


「行こう、空太」

 最初に声を発したのは焔だった。

「そうだね、この人の為にも前に進もう」

 今は前に進むしかない。そして必ず脱出するのだと空太は決心するのだった。

「行こう。エレベーターへ!」

「ああ。ナニカに遭遇した時は私に任せろ」

「頼りにしてるよ焔」

 二人は決意を胸にエレベーターに向かうのだった・・・・・・


♦読者さまへお礼とお願い♦


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