第11話 異界のゾンビはあっけなく

「状況はどうだ?」

 局長は職員に現状をたずねる。

「はい局長。只今、蒼井空太、神宮寺焔両名はゾンビに遭遇致しました」

「それで? どうなった?」

 局長は煙草を口に咥え火をつける。

「はい、現在教室に立て籠っております」

「ふん、逃げたか。だが時間の問題だな、奴らにできることは何もない。我々が見ているのだからな」

 ふーっと局長は煙草の煙を吐き出すと、職員に命令する。

「少しスリルを与えてやるとしよう。ゾンビの力を2倍に設定しろ」

「2倍・・・・・・ですか? それでは死んでしまうのでは?」

「構わん、元々イレギュラーである蒼井空太を排除するために我々は動いている、ここで素直に死んでくれた方が我々も楽ができるというものだ」

「ですが局長。神宮寺焔も一緒に行動しています。彼女は関係ないのでは?」

「いや、蒼井空太に関わった時点で、同罪だ。死んでも構わん」

「かしこまりました。ゾンビの力を2倍に設定致します」

 職員はカタカタとパソコンをタイピングする。

「ゾンビの力を2倍に設定致しました。まもなくドアも破壊されると思われます」

「それでいい。そのままモニタリングも継続するように。何かあったら報告しなさい」

「かしこまりました。局長」


――『ゾンビ』

 映画などで題材にされるほど、その知名度は世界的に有名だ。異界に送られた空太と焔は、今そのゾンビに襲撃されている。


 ドン! ドン!


 ゾンビはドアに頭を打ち続けている。その激しさは先ほどより激しくなっている。

「おいおい、まずいんじゃないか? さっきより激しくなってるぞ?」

 焔の方を見てみると、いつの間にか日本刀を腰に携えていた。いつの間に。さっきまで持ってなかったぞ?まあいいや。空太はスマホの画面を見る。そこにはゾンビの特徴が表示されていた。


『ゾンビ』

・視力が悪いため、嗅覚、音に優れている。

・一度獲物を見つけると、本能に従って対象に襲い掛かる。

・嚙まれたものは、感染し、数時間でゾンビ化する。

・弱点は頭部であり、頭部を破壊することによって無力化することができる。


 スマホに表示されていた情報は大体、映画と一緒だった。念のため、焔にも共有する。

「焔、どうやら今回の相手はゾンビらしい」

「ゾンビだと? またベタなものが出てきたな」

「ちなみに、弱点は頭らしい」

「なるほど。映画みたいにヘッドショットしろというのか」

「いや、頭部が破壊できれば無力化できるらしい」

「なるほど、ならばコイツの出番だな」

 焔は日本刀を鞘から抜くとドアの前に立ち、構える。

「さて、ゾンビのお手並み拝見と行こうか?」

 そう焔が言った瞬間。ゾンビがドアを破った。ゾンビは焔に向かって真っ直ぐに向かっていく。

「・・・・・・一閃!」

 焔が目の前から消えた。瞬間移動したかと思う速さだった。いつの間にかゾンビの後ろに立っていた。


 ザシュ!


 ゾンビの頭は真っ二つに切断され倒れた。的確に頭部を破壊している。

 焔は日本刀を鞘に納めた。

「ふん、もう少し骨があるかと思ったが、所詮はゾンビだな」

「いや、凄すぎるだろ! 何今の技!?」

「なに、ただ真っすぐに走って頭を切り裂いただけだ」

「人間離れしてるよ・・・・・・」

 空太はすごいものを見た、と思いつつ。ふと教室の隅を見てみると、何か紙切れのようなものが落ちていることに気づいた。

「なんだこれ?」

 空太は紙切れを拾い上げる。よく見ると文字が書いてあることに気づく。文字は次のように書いてあった。


『異界に迷い込んだ人へ』



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