第9話 学園祭。
「空太、学園祭当日、私と一緒に校内を回らないか?」
学園祭前日。バタバタしている生徒会室の中で、焔は空太に提案してきた。
「当日? 別にいいけど? 生徒会は大丈夫なの? 運営とかあって忙しいんじゃないの?」
「そこは心配しなくていい。当日はOBの方々も手伝ってくれるからな。一緒に回るくらいの時間なら取れる」
「そうなんだ。それなら一緒に回ろうか」
すると焔はオッドアイをキラキラさせながら言った。
「本当か!? 約束だからな!?」
空太はあまりの勢いに圧倒されたが、焔にはお世話になっているので、一緒に回るくらいなら大丈夫だと判断した。
周りの生徒会役員たちはひそひそと何かを話している。「やっぱり・・・・・・」
とかなんとか言ってるが気にしないことにする。
「ああ、約束するよ」
「よし、それでこそ空太だ」
それじゃあ書類を片づけるとしよう。そう言って焔は自分の席へと戻って行った。なんだかんだで空太も学園祭は楽しみにしている。しかも女の子と回ることができるなんて、凛に言ったら怒られるだろうなと思いつつ、書類を片づけていく空太なのであった・・・・・・
学園祭当日。
校外から一般のお客さんも来るということもあり、校内は人でいっぱいになった。みんな思い思いの展示コーナーや、出店に並んでいた。
「うわ~、人でいっぱいだね」
空太は純粋な気持ちを言葉にした。普段でも人が結構いるのに、外からお客さんが来るとこうもいっぱいになるのかと驚いていた。
「そうだな。かなりのお客さんが来てくれている。何事もなく、無事に終わればいいのだが」
空太と焔は約束通り校内を一緒に回るべく、学園祭入り口の昇降口前に立っていた。しかし、なにせ人が多い。このまま突入すればはぐれてしまうかもしれない。どうしたものか。空太が悩んでいると、焔が右手を差し出してきた。
「ほら、空太」
焔が手を差し出したまま何かを訴えている。
「え? どうしたの?」
空太が問いかけると、焔は驚きの提案をしてきた。
「手を繋ごう。そうすればはぐれることはない」
「ええっ!? 手を繋ぐ? いいの?」
「いいに決まっている、はぐれたら面倒だからな。ほら、早く」
「わ、わかった」
空太は差し出された焔の手を握った。焔の体温が伝わってくるのが分かった。握られた焔は満足そうに微笑むと、二人は校内へと歩き出した。
校内は人でごった返しており、確かに手を繋いでいなければはぐれてしまいそうなほどだった。
「最初はどこに行こうか?」
焔が聞いてきた。確かに、まだどこへ向かうか決めていなかった空太は、少し考えてから焔に提案した。
「屋上へ行ってみない?」
高校の屋上は普段は立ち入り禁止になっているが、学園祭の時だけ休憩スペースとして開放されている。眺めもいいので、まずは落ち着ける屋上に行こうと空太は提案した。
「屋上か。いいだろう、行こう」
焔も同意してくれたので二人は屋上へと向かうのであった。
屋上に行くには専用のエレベーターを使わないと行けないようになっている。階段では行けない設計になっているからだ。空太と焔はエレベーターに乗り込むと、最上階のボタンを押す。ドアが閉まり、エレベーターが動き出す。
「屋上へ行くのは、私は初めてだ」
「本当? 俺も初めてだよ」
空太と焔は共に一年生なので今年が初めての学園祭となる。当然、屋上に行くのも二人は初めてとなる。
「なんだ、空太も行ったことがないのか」
「まあ一年生だからね」
そんな話をしている内にもエレベーターは上昇していく。が。空太が異変に気付く。
「あれ? このエレベーターこんなに長かったっけ?」
エレベーターの階数表示を見てみると、3階を過ぎていた。おかしい。この学校は3階までしかないのに
「どうした空太? 何かあったのか?」
「いや、もう着いてもおかしくないのに、まだ上昇しているんだ」
「なんだと? 止められないのか?」
「やってみる」
空太はドアの開閉ボタンを連打したが、止まらない。緊急ボタンも繋がるか試してみたが、応答がない。
「駄目だ、止まらない!」
エレベーターはどんどん上昇していく、階数表示もめちゃめちゃに表示されていた。
このまま閉じ込められたままなのか。そう思った時。
チ~ン
エレベーターは急に止まった。続いて階数の音声案内が流れる
『お待たせしました。異界です。』
ドアが開くと生ぬるい風が吹き込んできた。そこに広がっていたのは不気味な夕焼けが広がる世界だった・・・・・・
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