第8話 生徒会。副会長任命。
「ど、どうも~。一年の蒼井空太と申します。これからよろしくお願いします」
「「「パチパチパチパチ!!」」」
空太は校内にある生徒会室の中におり、生徒会のメンバー達から歓迎されていた。
――どうしてこうなった?
遡ること、一週間前。
「空太! 居るか!」
ガラガラ! と勢いよく教室のドアを開けて空太を呼ぶ声が聞こえた。声の主は焔だ。
教室がざわつく。
「え? なになに生徒会長?」
「蒼井を呼んでたぞ・・・・・・?」
「相変わらずすげー美人」
焔はそんな声はお構いなしに、空太の座っている席を見つけると、ずかずかと中に入ってきた。
「空太、いるなら返事をしろ。いないかと思ったじゃないか」
空太はコカトリス戦の後の一件があってから焔を少し意識していた。
――重なる唇。その感触を今でも鮮明に覚えていたからだ。
「お、おお。悪い悪い。少しボーっとしてて」
「そうなのか? まあいい私についてこい」
そういうと焔は空太の制服の袖を引っ張る。
「お、おい! 引っ張らなくてもついていくよ!」
空太は焔のあとに続き、教室を後にするのだった。
「それで? 何しに俺の教室に来たの?」
空太は率直な疑問をぶつけた。返ってきたのは意外な一言だった。
「なに、空太を生徒会役員として迎えようと思ってな」
「なんだって!?」
空太は大きな声を出してしまった。
「驚くことはないだろう? 普通のことだ」
「いや、でも生徒会って選挙しないと役員になれないんだろ? どうしてまた急に俺なんかに・・・・・・」
「なに、もうすぐ学園祭があるからな。生徒会も色々忙しい。簡単に言うと人手が足りない」
空太の通う高校の学園祭は都内でも有名なイベントだ。校外から一般のお客さんも多くやってくる。生徒会は学園祭の運営、進行を同時にやるものだから、確かに人手が足りないのは想像できる。
「でも今から俺を役員にするのは無理なんじゃないか?」
「そこは心配しなくていい。生徒会長の特権を使う」
「特権?」
「ああ、生徒会長は学校の承認を得ずとも、役員を一人任命することができる」
「そんなことができるのか! 生徒会長って凄いんだな!」
「とにかく、一週間後。生徒会のメンバーに会わせる。そこで空太を紹介する」
「分かったよ・・・・・・ところで、俺の役職は? 書記とか?」
一呼吸置いた後、焔は意外な役職を空太に告げた。
「空太に任命するのは――副会長だ」
「副会長ぉ!?」
空太はまた大きな声を出してしまった。副会長ということは生徒会長の右腕として動かなければならないということだ。
「何をそんなに驚いている? 副会長はそんなに難しくないぞ?」
焔はそういうが、生徒会は忙しいイメージがある。特に学園祭ともなればその忙しさは考えただけで疲れてくる。
「とにかく、一週間後の放課後、生徒会室に来てくれ。私からのお願いだ」
焔にはこれまでモンスターの討伐で世話になっている。恩を返すという意味ではいい機会だろう。
「分かった。でも足手まといになっても知らないぞ?」
「構わん。私の傍にいるだけで大丈夫だ」
「分かった、それじゃあ一週間後」
「ああ、よろしく頼む」
――一週間後。今に至る。
「というわけで。今日から我が生徒会に加わるメンバーの蒼井空太だ。みんな仲良くするように」
「「「は~い」」」
生徒会のメンバーは空太を歓迎してくれた。
「では私は職員室に用事がある。その間に親睦を深めてくれ」
焔はそういうと職員室へと行ってしまった。空太が生徒会室に残る形になった。焔が職員室へと向かった数分後。
「ねえねえ! 会長とはどんな仲なの?」
質問タイムが始まった。最初に質問してきたのは書記の女子だ。
「ど、どんな仲? え~と、普通の仲だよ?」
空太ははぐらかした。この間、水族館でデートしたとは言えない。
「え~? 噓だぁ。会長最近機嫌が良かったから、何かあったんじゃないかな~と思ってたんだよね~」
次に話しかけてきたのは会計の女子だ。
「そ、そうなの? 気のせいじゃないかな~?」
空太は冷や汗がでてきた。今気づいたが、生徒会は全員女子だ。男子が一人もいない。
「え~? でもいきなり副会長に任命されたんでしょ? 絶対なにかあるとおもうけどな~」
書記の女子はなかなか鋭い。今は適当に答えるしかない。そう思っていた時。生徒会室のドアが開いて、焔が戻ってきた。助かった。
「どうだ? 親睦は深まったか?」
「「「深まりました~」」」
「そうか、それならいい。それでは学園祭会議を始めるぞ」
空太は、今後どうなってしまうのかと、心配になってしまうのであった。
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