終章 1


『さて、首尾は』


「最悪だよ。恨むぜ姉ちゃん」


『使いたければ好きにするがいい』

 

「今回ばっかりは、姉ちゃんの了承なんて期待してない」

 

『……お前、まさか』

 

「あたしがそんな悠長な人間だと思ってたか? 見込み違いも甚だしいぜ」

 

『……ふん。お前が私の言葉を待っているような妹なら、斬首刑に処していた所だ』

 

「負け惜しみだな?」

 

『さてな。好きなように取るがいい』

 


 そう言って、電話の向こうの相手は嬉しそうな声で電話を切った。

 

 それはつまり、あの人が安心したと言う証。あの幾年もの先を見通し、世界中の全てを見ているはずのあの人が、あたしを心配していたと言う証。


 思えば、イルカが一人で今回の全ての筋書きを描いたとは思えない。

 無事に解決出来る物語は、《何もかもを知っている人間》にしか作れないはずだから。


 そう。これは。


 イルカの事も。

 水奈の事も。

 あたしの事も。


 そして――ユイガの事も。

 


 全てを知っている人間が描いた、一つのストーリー。

 

 結局あたしは、踊らされただけだったのだ。


 ……ああ、本当にまったくさぁ。



「ありがとうな。姉ちゃん」



 

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