第5話反逆者

森田が部室に入ると、キャプテンの藤岡が巻きわらで、肩を慣らしていた。

「おっ、今日は早いな森田」

と、藤岡が声をかけると、

「ふん、今日でお前の恋愛は終わりだ!聞いたぞ!武蔵丸から」

「何を?」

「それは、今日で終了する。黙って見てろ。水間ちゃんはオレにメロメロになる」

藤岡は無視して、巻き藁に矢を放った。

次々に部員がやって来た。その中には水間の姿もあった。

やはり、女子部員は可愛い子がいるが水間が飛びに抜けてかわいい。しかも、巨乳だ。

道着に着替え、女子部員は全員胸当てを着けた。

胸当ては、女性の胸を保護するプロテクターみたいなもの。

森田は水間に近付き、

「水間さん。オレが皆中したらお付き合い考えてくれるかな?」

水間は呆れて、

「皆中したら考える」

「この森田純平、キャプテンから幸せを奪い、代わりにこの私が水間さんと結婚します」

皆中とは、4本の矢が全部、的に中る事だ。


部員全員が3番的、即ち中央の位置から1人だけ立つ、森田の動作を見物した。

皆中すれば、水間が森田の彼女になると言う言葉を聞いた部員は面白がっているのだ。

森田は全員が注目する中、1番矢を引く。

『見てな!水間さん。これで、皆中して水間さんと結婚するんだ!那須与一なすのよいちよ、このオレに力を与えたまえ』

森田は長いタメを引き、放った!


パサッ!


矢は、場外に飛ばないように設置してある安全網に刺さり、風で揺れていた。


ブッ!


ビクッ!

森田は緊張のあまり、放屁し自分自身が驚いた。見物席から、クスクス笑い声が聴こえてくる。

森田は更衣室に逃げ、カギをかけた。

久保塚と園山は、更衣室のドアをノックした。

「お~い、大丈夫かぁ~」

と、久保塚が声をかけると、中から

「今は1人にしてくれっ!」

「分かった!元気だせよ!森田」

「あ、ありがとう」

「オレはいつまでも、森田を応援するぜ!」

「園山 まで……」

「なぁ、屁コキ!」

「スカンク」

久保塚と園山は大笑いした。

「何で、オレばっかりこれなんだよ~!いい加減、彼女作らせて送れよ~」


この出来事は、翌日ウワサが広まり、森田はスカンクと呼ばれ、しばらくは空気のような存在で学校生活を送る羽目になった。

頑張れ!森田純平!17歳。君にも彼女は出来る。

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