第4話ブス

「よっ!森田。お前、彼女出来たらしいな」

「ケンちゃん。やっぱ、彼女は見た目より性格重視だよ!」

「ナツキは武蔵丸じゃん。性格いいの?」

「いいと思うよ」

森田は、同じクラスの男友達に、陰で笑われていることを知りながらもナツキを弁護した。

放課後、部活の前に、ベンチで森田とナツキは並んで座り、自販機で買ったオレンジジュースを飲んでいた。森田は、ケチで有名だがナツキにジュースを買ってくれた。

「ねぇ、ナツキちゃん。クラスのヤツラが僕たちをブスって言うけど、それはナツキちゃんの事だよね?僕は結構イケてると思うんだ」

ナツキはにこりと笑い、

「先輩。わたしのクラスの女子はみんな先輩の事をブスって言ってますよ」

「分かった。仮に僕はブスとしよう。だが、その僕よりナツキちゃんの方がブスだよね」

森田は熱くなっていた。

「いや……先輩の方が」

「い~や、ナツキちゃん超ブスだよ!僕の彼女じゃなかったら、ベンチに並んで座らないよ。そのうち、弓道の的にするかも知れない」

ナツキはうつ向いた。

森田は言い過ぎたと思い、慌てて言葉を付け足した。

「同じブス同士、頑張って生きて行こう!」

「先輩、水間先輩って巨乳ですよね?」

突然、ナツキは水間の話しを始めた。

「う、うん。弓道部の女子の中じゃ一番かわいくて、巨乳で有名だよ。それが、どうしたの?」

ナツキはストローでオレンジジュースを飲みながら話し出した。

「誰にも言わない?」

「うん」

「怒らない?」

「う、うん」

「実は、水間先輩、藤岡先輩の彼女なの」

「うん……な、何ですって?あんの、エロキャプテン。自分は美女で巨乳を捕まえ、オレは、こんなブスと……」

「先輩の方がブスです」

森田は熱くなりすぎて、はぁはぁ言っている。そして、空の紙パックを握り潰した。


「キャンセル」

と、森田は言った。

「先輩、何がキャンセルなんですか?」

「お前と付き合うのキャンセル」

「……やっぱり、わたしはブスだから、恋愛も向いてないですね。ごめんなさい、先輩」

その時だ!

「ナツキ~」

そう叫んだのは、1年のバスケ部の田村だった。彼はイケメンである。

「田村君」

「ナツキ、オレはお前の事が好きだ!」

「わ、わたしは先輩の彼女だから……」

「戻ってこい!ナツキ」

「……田村君。……先輩、わたし田村君の元へ行きます」

森田はキョトンとして、

「いいよいいよ、遠慮しないで彼の元へ行くが良い」

「すいませんでした。森田先輩。さようなら。ブスな彼氏より、イケメンの方がわたしには合っている気がします」

「てんめぇ~、ぶち殺すぞ!」

「ナツキ、早くこっちこい!ブスな男は心もブスだから。森田先輩なんか、顔も性格も超ブスで有名なんだから」

田村はナツキにそう言って、肩に腕を回し、

「森田先輩は、もっと女心を勉強して下さいね。あっ、頭も悪かったですね。すいませんでした」

森田は、膝から崩れ落ちた。

「それよりも、藤岡だ!オレの水間ちゃんをわたくししやがって」

森田の復讐のベクトルは藤岡に向いていた。

翌日、掲示板に、

『衝撃!!森田、武蔵丸にフラれる!』

と、印字された紙が貼り付けてあった。

久保塚か園山の仕業に違いない。

心もブスの森田は、地団駄を踏んだ。

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