白い少女の世界 ⅰ
少女の部屋はお気に入りの、白いものと透明なもので満ちている。
その
レースの天蓋に守られた小さなミルク色の世界で少女は微睡む。白い睫毛の下のラベンダー色の睛で、夢と現のあわいをじっと見つめる。
夢のなかで、彼女の人形に似た等身大の天使に出逢う。少女の姿をした天使は架空の友人の一人で、彼女がその人形を手に入れた日から何度も夢に出てくる。天使に手を引かれると、ごく低くだが少女も一緒に翔ぶことができる。森のなかや花畑の上、清らかな泉の上を微風のように二人で漂って行く。
その日は白い小さな花が咲き乱れる丘の上で、二人で花冠を作った。それをお互いの頭に乗せて咲い合う。永遠に続く午后の日ざしのなかで、永遠に二人は無垢だった。
目が醒めたとき、少女はまだ永遠を引きずっていて、周りの現実の儚さを過敏に感じとってしまう。少女は再び机に向かい、架空の友人(先ほどの天使とは別の友人である)への手紙の続きを書いた。
夕暮れが近づいて、白い部屋ぜんたいが淡い橙に染まるまで、少女は手紙を書き続ける。
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