第25話 エピローグ
司会者:田中先生の話に頷きながら
「単なる利権団体である既得権者の団体の声が大きいから、忖度するようになるんですけど、実際には少数の「ノイジーマイノリティー」であって、大多数を占める「サイレントマジョリティー」たちが本気を出せば、自分たちのことを考えてくれる政治家が選挙に勝つわけです」
田中先生
「町田知事の場合がそうだったんです。このまま、町田知事が消えたままだとすると、都知事選があるわけで、誰かに担がれた候補者が当選すれば、ここまで進んだ改革の流れも元の木阿弥なんですよ。
わしは誰が担いでいるかを可視化する必要性を感じとりましたが、時間がないですよね」
司会者
「町田知事が言っていたのは、選挙制度の変革かもしれませんね。ある意味、社会の膿を出し切る、未来を他人任せにしないといった町田知事の発言にも合致している気がします。
じゃあ、皆さんはどのような選挙制度に変えたらいいと考えますか?」
田中先生
「わしは今みたいな選挙運動員を動員しなくてもできる選挙にする必要があると思うな。実際にあんな風に選挙事務所を構えて、人を動員せんでも選挙はできるんや。わしはマイク一本で選挙を乗り切った男やからな」
司会者
「田中先生、そこを具体的に説明して頂きたいんですが?」
田中先生
「公職選挙法の条文を変えるんやのうて、解釈を変えるんですよ。元々、車を何台も連ねて、名前の連呼するのも、戸別訪問するのもグレーゾーンですから」
目黒氏
「ほんま、あれ、何がしたいんでっか? 大事なのは当選したら何をするか? マニュフェストでしょう」
渋谷教授
「マニフェストの発表の場、我々のようなコメンテーターが、それに対する質問や意見を交わせる場を、公衆の面前で提供するのはどうです。それで一年後とかにマニフェストの項目に対して評価を行い、赤点だと落選で、選挙をし直すんです?」
目黒氏
「それはええわ~、緊張感を持って政治ができますやん。大体、当選したら仕事は終わりやと考えている政治家先生方も多いやから……。会議中に寝とったら、当然、落第な!
あと、ばら撒きばっかの政策もノーサンキュや。それは票集めの人気取りで政策とは云えへん。
まず、町田氏が云った通り、為政者がやるべき課題は3つ。飯の種の提供、治安維持、国家防衛や」
田中先生
「目黒さんのおっしゃる通りです。町田氏のような強引な手法じゃなく、硬軟取り混ぜて取り組んでいただきたい。治安維持も警察の強化だけじゃなく、教育や道徳に力を入れ、生活保護などのセーフティーネットにも力をいれなけりゃいけない。
国防だって、軍事力だけじゃなく外交にも力を入れなけりゃいけない」
司会者
「そう考えると、色々な角度から政策が検討できそうですね。ただ、先の3つの課題にどれだけ貢献しているかで評価すると、ばら撒き施策っていうのは、評点は低くなりますね」
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テレビ放送も、コメンテーターの議論もまだまだ続くみたいだけど、この物語はここでおわることになる。
町田朔がいなくなった今、このコメンテーターたちがオピニオンリーダーとなり、民衆を導いていくのか? はたまた、未来を憂う誰かが立ち上がるのか? 政治家自らがその襟をただすのか?
第二の人生を歩き出し、家庭を持った町田和彦は家族のために奮い立てるのか……?
読者の住んでいる世界から分岐したパラレルワールドの未来は現在進行形であるが、分岐していないこの世界はどんな未来に辿りつくのか……?
言い古された言葉だけど、「過去は変えられないけど未来は変えられる」そして「周りは変わらなくても、自分は変えられる」
いずれにしても、人やAI(人工知能)に与えらた選択肢を選んだり、その選択肢でさえ選ぶの人任せにする。
そうじゃなく、自分で選択肢を作り出さない限り、ろくな未来にならない気がする。努力した数だけ選択肢があると信じて……。
終わり
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