第24話

 目黒氏と渋谷教授の歯切れのわるい回答に、元政治家の田中先生が気炎を吐いた。


「だったら、我々が未来を変えればいいんですよ。町田都知事も云っていたでしょ。AIに未来を乗っ取られない政策、切り札ってやつをわしらがやればいいんですよ」


「さすが田中先生! その通りですよ。じゃあ町田都知事が考えていた政策というのは何なんでしょう。その辺はどうですか? 知事室の神田さん」


 司会者に促され、アナウンサーの神田が知事が消えてあたふたしている側近たちにしがみ付いた。


「ちょっと落ち着いて!! 町田都知事が最後に云おうとしていた政策はどういったものなんですか? みなさんはご存じですか?」


「われわれは、この後の政策については何も聞いておりません。あの人はあまり政策については話さない人でしたから」


「政策誰かに言うと、どこからか漏れ、利権団体から圧力がかかるため、慎重に準備して、マスコミに発表した後、一気果敢に進める感じでしたし。そういう意味じゃあまり私たち公務員は信用させていませんでしたから」


「うーん。それは困ったな。こちらではどんな政策を考えていたかわからないようです。とりあえず、スタジオにマイクを返します」


 アナウンサーはそういって、スタッフにサインを送った。

 それを合図にカメラがスタジオのゲストを映しだした。


 ここからは、シナリオ風にお送りします。


渋谷教授:カメラが回ってくるのをうずうずと待っていた。


「町田氏が云ったようにAI のアルゴリズムを解析して、AIに人間の感情を持たせ、人間の味方にするのが最優先でしょう。その研究には私も興味があります。私が参加することで打開策が発見できるかも!」


司会者:カメラ目線で

「そうですね。まず、AIが人間の進歩に寄与している以上、AIを切り捨てるわけにはいきません。人類がAIをコントロールすることは必達でしょう」


目黒氏:腕組みをして聞いていたが、その腕組みをほどいて身振り手振りを入れて話し出した。

「判断をAI任せにしたらあかんわけですから、国民自身が賢うならんとあかんのです。何事も自分で考え判断し、選択することができんとあかん。簡単なようでこれが一番難しい」


司会者:目黒氏の発言を拾って投げ返した

「目黒さん。具体的には何を一番に考え、選択すべきでしょうか?」

 

目黒氏:視線を天井に向け、考えを整理しながらゆっくりと話しだした。

「抽象的な言い方やけど、自分自身の考え方、生き方やろうな~」


渋谷教授:目黒氏の発言内容に不満そうに、

「考える基礎となる知識も大事です。ただ、どんな知識を学ぶのが良いのかが難しい」


目黒氏:渋谷教授に頷きながら

「そやな~、学習能力はAIの独壇場やからな~。ネットで勉強してたら、自分の考えやと思い込まされて、その実、AIに思考誘導されとる可能性はあるからな」


司会者:意図した発言を拾って、興奮したように発言した。

「なるほど、自らのセンスで選択しているはずが、その選択は操られた結果っていうのは、ネットショップなんかでもありますからね。これが進むと洗脳やファシズムですよ」


田中先生:ファシズム発言は、政治家にとって思うところがあったようで

「ファシズムですか……、そういった意味じゃ、最優先は、自分で考えて行動することは選挙で誰に入れるか選択することですよね。それ以前に、選挙に行くか?が重大ですよ。わしの時もそうでしたが、町田知事が選挙で勝つことで社会が大きく変わりましたよね。


 あの時は、町田知事がTwitter出身者で、選挙の応援もフォロワーが中心になって選挙戦を戦いましたよね。投票率も80パー超えで、予想外に町田都知事が圧勝したわけですし」


司会者:選挙の話になったために、元政治家の田中氏に話題を振った。

「田中先生の時はどうだったんですか?」


田中先生:

「わしの時は友達だけでしたよ。講演会っていう既存組織に選挙を任せると楽なんだけど、その人たちのための政治をやらざる負えない。

 選挙の時に、選挙事務所にいくとよくわかるんですよ。この候補者は誰が選挙を仕切っているのか……。


 大体、与党は大手ゼネコンか宗教団体、野党は労働組合、この団体に選挙支援を頼むからこの人たちの代弁者になり、利益優先の政治になってしまう。これらの団体は選挙を裏で支えてきた選挙のプロなんですよ。


 選挙が変わらないと政治は変わらない。政治が変わらないと未来(せいかつ)は変わらない。未来を変えたいなら、一番に考えてほしい。選挙に行って誰に票を入れるかって!!」

 コメンテーター全員を見回す。

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