登場回

あの場所を楽園と思う人もいれば地獄と思う人もいるだろう。

薄汚れた労働者が新鮮な女学生を演じることもできれば、嘘偽りなく自分をさらけ出すこともできる。

インターネットとはそういう場所だ。


「はじめまして」


そのインターネット上の小さなコミュニティに、たった今新しい仲間が加わった。

名前は...牛丼。美味しそうな名前だ。


「その絵、あなたが書いたんですか?」

「すごいですね!」


敬語...か、第一印象はかなりいい。


「どうも」

私は軽く挨拶をする。


「さっきカメムシドライヤーについててオェってなった」

とりあえずさっき体験した惨事を報告しておく。


残念ながらその報告は誰の耳にも届かず、自分の仲間たちは新入りをチヤホヤし続けていた。


「Jackさんすごいですね!」

どうやら彼の関心は、あのJackに向いているらしい。

そんな中、怪盗Rがやってきた。


「はじめまして」


彼は軽く挨拶をする。

しばらくすると、牛丼も返事をした。


「はじめまして!」

いい声だ。聞こえないが。


牛丼はJackのプログラミング談義に喜んで付き合っていた。

Rはその状況に堪忍袋の緒が切れたのか、話が盛り上がってきたタイミングでスクショを投稿した。


「いつシフォンさんに抱かれてもいいようにしないとな」

...Jackの昔の発言である。

牛丼は衝撃を受けた後、こう答えた。


「えっ...」


そりゃそうだ。

今まで気前よく自分の知らない『プログラミング』という世界を見せていた好青年が

こんな発言をしていたなんて。


だが牛丼に同情はできない。だってそうだろう?

ここはどんな人間でも演じられる世界、インターネットなのだから。

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