第18話 ルリと遊ぼう3

「リン!」

「、、、」

「リン!!」

「、、、」

「リン!!!」

「、、、」

「レモンストロングが我らの独占商品じゃなくなった今、次の一手に出なくてはいけない!!!それは何だと思う!?」

「、、、」

「何だと思う!?」

「、、、」

「それは新メニューの開発!」

「、、、」

「その通り!新メニューを作るからには新たなる食材が必要不可欠!」

「、、、」

「わかってる。でも安心しろ!情報を仕入れて来た!」

「、、、」

「焦るな!今教える!その名はスケルトンバード!!!」

「ぐちゅぐちゅ、ぺっ!今歯の治療してるから話は帰るまで待ってろよ!」


歯医者で虫歯の治療をしていると、いきなりルリがやって来た、


「これは一刻を争う!だからこんな不吉な機械音が絶えない場所まで来てやった!感謝!感謝しろ!早く!」

「、、、あ、ありがと」

「あと謝罪も!返事がなくて寂しかった。心が折れそうだった」

「いや、歯削られてるんだから返事できるわけないだろ。てか返事なしでよくあそこまで話せたな。いつも思ってるけどお前のメンタル化物レベルだな」

「いいから謝罪!」

「ええぇぇ」

「謝罪してくれないと全裸で土下座して足を舐める」

「そういう使い方もしてきたか」

「早く」

「悪かったよ」

「よし、許してつかまつろう!」

「どういう立場なんだよ、お前」

「では早速行く!いざスケルトンバード捕獲へ!」

「はぁ」





俺とルリは山を登っていた。

王都の西にあるドルメイヤ岳。

高さはそれほどでもないが、断崖絶壁の岩山で、登ることはまず不可能だ。

羽でもない限り。

今そんな山を俺は登らされている。


「はぁはぁはぁ」

「リン!早く!頂上はまだ先!」

「お前はいいよな。浮けるんだから!」


俺は岩をよじ登っているというのに、ルリはフワフワ浮きながら後ろからグチグチ言ってくる。


「浮けるのは私の実力!嫉妬は見苦しい!」

「嫉妬とかじゃなくて、理不尽だって言ってるんだよ!」

「理不尽を乗り越える!その先に成長がある!」

「だからお前は何目線なんだよ!」


ルリの話ではドルメイヤ岳の頂上にスケルトンバードの巣があるらしい。


「で、その情報は誰から聞いたんだっけ?」

「何度も言った!裏路地でガラス球を宝石だといって子供から小遣いを巻き上げてるおっさん」

「だからただのクソ野郎じゃねーか!その情報本当なんだろーな!ウソだったらそのおっさん警察に突き出すぞ!」

「宝石は偽物だったが、あの熱い目は本物だった。私の目に狂いはない!」

「お前の目が一番信用できないんだけど」

「ふふ」


『またまたぁ』みたいな感じでルリが笑っている。

なんかこの子すんごいムカつくんですけど。


更に4時間後


「はぁはぁはぁ、やっとついた」

「よくやった!褒めて遣わす!」


もうルリにツッコむ気力はない。

という訳で俺たちはドルメイヤ岳の山頂に辿り着いた。

そしてイラつくことに、スケルトンバードの巣は本当にあった。


「でも巣はあるけど、鳥はいねーぞ?」

「いる」

「はぁ!?」

「スケルトンなんだから見えないのは当たり前。見るんじゃなくて感じる!」

「はぁ、めんどくせぇな。めんどくさいからこの山、消すわ」


このあと下山するのは絶対嫌だった俺は全力で地面を殴りつけた。

そしてドルメイヤ岳はこの世界の地図から消えた。

山の崩落に巻き込まれたスケルトンバードは死んでいた。

スケルトンだからよくわからないけど、ルリが言っているんだからそうなんだろう。

スケルトンバードを収納袋に入れて、俺たちは〝地獄の瘴気亭〟へと帰った。


「で、そのスケルトンバードはどこにあるんっすか?」

「その辺にあるんじゃねーか?一応収納袋からは出したぜ?」

「確かになんかありますね。でも見えないんでどうやって捌いたらいいのかわからないんっすけど」

「なんかペンキとかぶっかけたらいいんじゃねーか?」

「却下!そんなことをしたら肉に変な臭いがつく!」


ルリが割って入って来る。


「いや、だってそうしないとユフィも調理できないって言ってるだろ」

「ユフィ神なら可能」

「でもルリちゃん、さすがに見えないとですね」

「ユフィ神はまだ自分の本当の力に気付いていない」

「えっと龍としてはここまで料理できてる時点でかなり限界を超えてると思うんっすけど?」

「ユフィ神なら視覚ではなく気でスケルトンバードを感じ取れるはず」

「いや、気って」

「私はユフィ神を信じている」

「でも自分気とか知らないし」

「私はユフィ神を信仰している」

「それは嬉しいんですけど」

「私はユフィ神を愛している」

「、、、」

「大好き!」

「、、、」


このあとユフィは一週間かけて修行し、遂に食材の気を感じ取れるようになった。


「遂にできたっす!これがスケルトンバードの親子丼っす!」


そして本当にスケルトンバード料理を作り上げたのだった。

ユフィの修行中にスケルトンバードについて調べてみたのだが、スケルトンバードを料理できたものはまだ一人もいないらしい。

なんでって?

もちろん透明だから。

スケルトンバードが美味しいという噂は、スケルトンバードに殺されそうになった冒険者が最後の抵抗で齧りついた時に『う、、ま、、い、、、』といったように聞こえたというのが理由らしい。

死に際にうまいって言う奴なんているわけねーだろ。

絶対にガセだ。

もしくは仲間を見殺しにしてしまった冒険者が罪悪感を軽減するために最後の言葉を都合よく解釈しただけだろう。

要するに絶対うまくない。

だって見た目がよくない。

米とタレの間に透明な部分があるドンブリ。

タレがまるで浮いているようだ。

そもそもスケルトンってなんかプラスチック感があるんだよな。


「いただきます」


ルリは迷わず食べた。

こいつの精神力はやっぱり規格外だな。


バリ!ボリ!グニュ!


ああ、ダメた。

噛んでる音も完全にプラスチック。


「味のガンプラやー!!!」


ああ、やっぱりダメだ。

味のガンプラだもの。

プラスチックの権化だもの。

ていうかルリ、それ褒め言葉じゃないと思うぞ。


「ん?アニキは食べないんすか?」

「俺はいいかな」

「え、ウソっすよね?自分が修行してまで作り上げた料理を食べてくれないんっすか?」


ユフィが涙目で俺を見てくる。


「じゃあお前も一緒に食おうぜ」

「え?」

「だから一緒に食おうって言ってるんだよ。せっかくなんだから」

「じ、自分はたくさん味見したんでもういいっすよ!」

「ん?もしかして味見したから食べたくねぇんじゃねぇの?」

「ち、違うっすよ!味見でお腹いっぱいになっただけっすよ!」

「、、、これプラスチックだろ」

「ち、違うっすよ。、、、プラスチッキンっすよ」

「上手くねーんだよ」

「食べてくださいよぉ!!!」

「おい!無理やり口に入れてくるな!!!」

「南無三!」

「おえぇぇ!!!」

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