第15話 怒らせちゃいけなかった人たち

俄然〝地獄の瘴気亭〟は大繁盛中だ。

忙しいが、この忙しさが丸ごと金になると思えば悪くはない。


「ヨーグルトとフルーツをクラッカーにのせたやつ1つ!」

「ナッツとドライフルーツを混ぜたのにクラッカーをつけるやつ1つ!」


ユフィはいないがギルの収納魔法にストックがあるので、そこも問題ない。

まったく、今日も閉店まで働きづめかよ。

たまには昔みたいに閉店時間を巻いてみたいもんだぜ。

ぐへへ。

今度の休みにアレ買っちゃおっかなー。

第一回鬼嫁VS鬼姑の決まり手フィギュア。

数量限定でもう手に入らないが、フリマサイトで買えるらしい。

定価の倍ぐらいするらしいが今の俺なら問題ない。

アレも買っちゃおっかなー、空気夫フィギュアと定年空気舅フィギュア。


「リン!!!」


夢を膨らませていると、店にリエが飛び込んできた。

泥だらけになって満身創痍といった感じだ。

何があった?

というか、、、ユフィはどこだ?


「リエ、なにがあった?そしてユフィはどこだ?」

「ユフィは用心棒としてちゃんと私を守ってくれていたんだ!でもマルセル組の連中、売りに出す前の奴隷たちを連れてきて戦わせようとした!」

「はぁ!?」

「ユフィは奴隷たちと戦うことはできずに奴らに捕まった!私はユフィに逃がされてなんとかここまでこれたんだ!」

「、、、奴隷ね。そりゃユフィは捕まるしかないわな。あいつは誰よりも優しいから」

「リン、外にマフィアっぽいのが集まってるぞ?マルセル組の連中だろう」


ギルも異変に気がついて飛んでくる。


「だろうな。リエは追いかけられてきたわけだし」

「どうする?」


ギルが答えの決まっている質問をしてくる。


「殺す」

「了解」


ユフィを捕まえただ?

ウチの料理長を?

俺の大事な女を?


「リエは私が見ておく。ユフィ神の残りの料理も食べておく。店は臨時休業。だから行け!地獄の戦士たちよ!」

「ツッコミどころは多々あるが、今はいい。リエと店を頼んだ。俺とギルは用事が出来た」

「りょ!」


敬礼をするルリ。

ふざけているようだが、ルリは真剣だ。

見た感じではわからないだろうが、ルリは怒っている。

そしてそれは俺とギルも同じだ。


「おい!ここに逃げ込んだ女を出せ!!!」

「「「「「きゃぁぁぁぁ!!!」」」」


突然マフィアたちが店にズカズカと入って来る。

ちょうどいいじゃねーか。

客は怯えて逃げ出していった。

空になった店には俺たちとマフィアの構成員20人程度が残った。


「殺されてぇのか!さっさと女を出せ!!!」


マフィアの一人がテーブルを蹴り飛ばす。


「マルセル組に逆らってタダで済むと思うなよ!」


別のやつが今度は料理と酒が乗っていたテーブルをひっくり返す。


「早くしろよ!おらぁ!!!」


更に別のやつが蹴りを入れて壁に穴を空けた。


「おい、お前ら。誰の店で調子こいてんだ?」

「ああん!?」

「ギル、こいつら外に出してくれ」

「わかってる」


すでにギルは連中の足元に転移陣を展開していた。

次の瞬間、連中は店の外へと転移させられる。


「何だこりゃ!?ん?なんだよ!店から出されただけか!」

「ははは!これで何秒稼げるんだ!?」

「せめて今度はゆっくり入ってやろうぜ?」

「ひゃはははは!!!」


再びウチの店に足を踏み入れようとしているクソども。


「もう二度とお前らはウチの店に入れねーよ」


こいつらごときを殺すために店が汚れるのは耐えられない。

俺は外に出てクソどもと向かい合う。


「たかだか酒屋の店長がなにするつもりだ!?」

「酒ならお前らぶち殺した後に全部飲んでやるから大人しくしてろ!」


クソが何か喋ってる。


「ギル、こいつらなんかうるせぇな」


ー黙れー

ー動くなー


ギルの一声でクソどもは話すことも動くことも出来なくなる。


「んーんーんー!!!」

「口を閉じてもうるせぇな。死ねよ」


ゴギュン!×20


とりあえずマフィアのクソども全員の首をねじり切った。


「ギル、ユフィはどこだ?」

「マルセル組の本拠地だな」

「じゃあ潰すか。そのマルなんとか」

「死体は俺に寄越せ。魂をいじくり回して地獄を見せてやる」

「今殺した奴らは?」

「もう弄った。自分の首がねじり切られる感覚を300年かけて味わってるはずだ」

「そっか。これから殺す奴は3000年にしとけ」

「はいよ」





ボルケーノファミリー傘下マルセル組、バアルの部屋


「これが用心棒か。本当に女だ」


バアルの前に連れてこられたユフィは隷属の首輪をつけられていた。

更に首輪の他に手錠に足かせと大盤振る舞いだ。

隷属の首輪は本来犯罪者に付けられるもの。

罪を犯した者ならばその罪が証明された瞬間、強制的に取り付ける事が出来る。

罪がないものも本人の了承を得られれば取り付け可能だ。

今回は後者。

ユフィは肉の壁にされた奴隷たちを守るために自ら隷属の首輪をつけられることを了承した。

隷属の首輪をつけられたものは主人の命令に逆らえない。

この首輪の主人に設定されてるのはもちろんバアルである。

だが隷属はしていてもユフィなら命令される前に相手を殺すことも可能。

という訳で力を奪う目的で、〝弱体の腕輪〟と〝弱体の足枷〟もつけられていた。

まあ悪人であってもユフィが人を殺すことはないのだが。

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