母よ、輝く心の喜びよ - 8

とある女

――――――


 気付いた時には朝浜辺の上にいて、周辺には船と共に流れたのだろうびしょ濡れになった物資の箱や船の欠片だったものも一緒にわたしも流れついてきていた。


 砂の上にいた。

 横たえてるわたしの上には瓦礫のように色んなものが乗っかってきている。


 抜け出せたと思えば足が砂に持って行かれて歩けない。


 靴を脱ぎ、少しだけ足が軽くなった。


 魔法を解除した。身体は縮んだが軽くなった。


 おもむろにその辺にあった箱の中身や木片の下を覗いた。


 別の砂浜にいるのではないかと思って、別の場所を探した。


 けれどどこにもわたしが探しているものはいない。


 歩き続けて、わたしは何もない砂浜の上にへたりこむ。


「――どう、して」


 掠れた声で疑問が零れた。


 わたしは、母の代わりに母が出来なかったことをしたかっただけだ。


 なのに大切なものが次から次へと生まれては掌から溢れていく。


 どうして。


 どうして。


 どうして。


 どうして。


 わたしはただ、かえりたかっただけなのに。


 船を落とした者の顔を思い出す。


 彼らは見るのも嫌と思うくらいに真っ赤な色を持った者達だった。


 髪に瞳に翼に脚にその尾までもが、何もかもが赤い。


「ふふっ……」


 面白くもないのに、笑みを浮かべた笑いが込み上げてきた。


 そうだ、わたしはどれもあの色に惑わされて、奪われてばかりだった。


「はは、は……あっははははっ!!!あーっはははははははは!!!」


 そうだ、全ての赤を壊せばいい。



―――



 それからというもの、わたしは島の中をまとめるために動いた。


 島に残っていた弟妹達に再会すると、彼らはすぐにわたしの元に集い、わたしが争いをやめろと言えば、各々の種族の長達を集めてきた。

 何も知らない長達はわたしの姿を見て、一度は旧種だと蔑んだ目を向けていたが、古くからいる弟妹達がわたしの前に跪いたのを見て目を見張った。


 これはあくまで事前に打ち合わせて行っているパフォーマンスである。


 これらの手法は長く生きている分嫌と言うほど培われた。


 わたしは皆の姉でありながら母である女神の代理人である。


 その立場を明確にしなければ、数多あまたいる弟妹達をまとめることは出来なかったのだ。


 しかしわたしの目的はこれだけではなかった。


「そこのあなた。母が生きていたころに見たことがありませんね。あなたの先祖はから来たの?」

「……!」


 わたしが指名した者はわたしが乗り合わせた商船を襲った者とよく似た特徴の男だった。

 蝙蝠にも似た形の翼に硬いワニのような鱗を持った四肢に尻尾。特徴的な角。そして真っ赤な髪と瞳。まるでわたしが大昔、どこかの遺跡の壁画で見た竜のようだ。


 弟妹達も男に視線を向ける。視線を受けた男はこめかみに汗を滲ませていた。


「……祖先は大陸の方から来たと伝えられています」

「そうですね。だって今までこんな姿の弟と妹を見た事がないのですもの」


 わたしは今まで母が産んだ弟妹を全て知っている。

 父がいなかった頃に生んだ魔獣も含めて全てだ。魔獣と人間を掛け合わせた混血かもしれない。しかしこんなに真っ赤な髪を持つ生物を見たことがない。


 赤髪の人間は母だけで十分だ。


「大昔のことです。失踪した妹がおりました。この場にいる兄弟達は、知っていますね。中にはその子供たちもいるのではないでしょうか。……狼のパパルナです」


 パパルナを知らない者が半分くらいか。何の話だと訝しげに様子をうかがう者、何かを察知して青ざめた者、場の雰囲気を愉快そうに見ているものがそれぞれいた。


「なぜ、あなたの腹の中にパパルナの気配を感じるのでしょう」

「ち、違います!これはっ!」


 赤毛の男は大きく身体を揺らし、下げていた頭を上げては慌てて弁解しようとした。


「おかしいですね。あなたの腹の中に、女神の気配を感じたのですよ。母の遺言で、母の血肉を食べたのは、わたしとパパルナと他五人。パパルナを除いた皆はもう儚くなっていることは確認しているのですから、残りはパパルナだけだと思ったのですが……」


 周囲の視線はかなり厳しいものになっている。特にパパルナが祖先となる狼の種族の目は酷く軽蔑した目を向けていた。

 今わたしの中には化け物がいるのが分かる。それを本能で察知した者はわたしから目を離さず、ひたすら委縮している。


「パパルナを食べたのはあなた方ですね」

「………………」


 数秒の無言。それを肯定と捉え、わたしは周りの視線も厭わずその場で彼の首を切り落とした。

 突然の出来事でこの場が騒然になる前にわたしは一声あげて鎮める。


「この男の種族を探しなさい」


 この一言で彼らの怒りの矛先は一斉に赤毛の彼に向いた。

 それぞれ見た目も文化も違う種族を統一させるには共通の敵を作ることが手っ取り早いと実感する。


 それからわたしは彼らを竜族と名付け、島の中にいる竜族を外へ追いやった。


 なぜ彼らの髪が母と同じ赤毛なのか、なぜ知らない間に島に住んでいたのかは考えなかった。

 母とよく似た赤毛から、母と繋がりがあるかもしれないと考えたが、殺したことに後悔は感じなかった。ただただ、わたしは彼らが憎かった。


 念の為わたしの子供を攫っていないか探したりもしたが見つからなかった。


 新種達が迫害していた旧種と呼ぶ人間を擁護しつつ、今まで小さな村や町しかなかった島全体をまとめて国を作った。

 その傍ら旧種達の中にいる子供を探してみたが、わたしの子供は何処にもいなかった。


 それから一年もしないうちに一番近い大陸の国が炎に包まれた。

 北側にある国が統一し、それでも足りず南下して侵略を進めたらしい。海をまたいだ先の土地だが、この島も脅かされそうな勢いであった。


「大陸から魔石を取引したいという声が強くなっています」

「こちらが欲しい物資をくれるなら応じましょう。こちらが戦にかかわる必要はありません」


 しかし取引を試みる国の中に北の国が現れるようになり、時にはこちらに逃げてきた者もいた。逃げてくる者は新種と呼ばれる者ばかりだった。

 彼らが魔石目当てに獣人狩りをしていることを知った時、周りの空気が険悪になった。


「北の者はかなり欲深いですね。魔力は風のように、限り無いモノですが、それは使い潰さなければの話です」


 とはいえ逃げてくる者を受け入れるのも限界が来る。わたしは自らの足で大陸に向かい、彼らと交渉を試みることにした。

 女神である母を守ったこの島を、大陸の属国にしたくなかったのだ。


「……姉上がわざわざ足を運ぶ必要はないのですよ」

「北の言語が分かる者はいないでしょう?」


 進言してくる弟にはそう言ったが、やはり自分の子供達を見つけるのを諦めきれなかった。


「あなた様は、種族を無理矢理統一させたことに後ろめたさを持っているのかもしれませんが、わたくし共は姉さまを家族として慕っているのです。

 どうかあなた様を守らせてください」


 しわがれた手でわたしの手を握る妹の一人を見て、わたしは顔を歪ませる。

 後に生まれた家族が先に死んで行く。随分昔に慣れたつもりだったが、時の流れの残酷さは相変わらずわたしの心の穴を広げた。


 弟妹達はまるで出陣するかのような勢いでわたしを武装させることでようやく許しが出たのだった。



―――



 今まで元の13歳の姿で振舞っていたのを、当日は20代後半くらいの姿で表に出た。顔付きはほとんど変わらないが身長も体形も大分変わるから、子供だと侮られることはないだろう。

 この姿になるのは子供達から手を離して以来久しぶりだ。


「威勢が良いからどんな奴が来るかと思ったら、なんだ女か」


 北の国の者との対談はあちらが横柄な態度を取ってきたせいでお互い険悪な雰囲気になった。こちらは長だぞと威嚇代わりに笑みを深めるがあちらの態度は変わらない。

 血の気の多そうな男は薄緑色の髪と灰色の瞳が北側の人間であることが感じ取れる。


 後ろに控えている明るい茶髪の文官に一瞬目が行ったが、わたしは何もなかったように目の前の男と会談を始めた。


「話になりませんね」

「そちらが折れれば解決することだろ?」


 あちらは魔石を多く取引したい、こちらは一定以上売りたくない。

 そんな押し問答ばかりを続けて、お互いに譲ることもない。

 なぜ魔石が必要なのか、あちらの国にも魔石を増やす儀式はあるだろうと言っても一瞬怯むだけで、首を横に振るだけだ。


 こちらも多く売らないと譲らないので、あちらも何か手があるのか箱を取り出してテーブルに並べてきた。高品質な魔石たちだった。


「……これは?」

「とある闇市で取引されていた魔石だ。聞けば魔獣狩りで採取したらしいが、これほどの魔石から取れた魔獣なら周辺に甚大な被害が及ぶはずだ。

 いくら闇市周辺でも被害が甚大になるなら討伐隊が組まれるはずなのに、そんな話はどこにもなかった」


 その魔石はこれまでわたしが髪の毛から作ったものだった。

 背中に冷汗が垂れる。


「その魔石が売られた時期は母国に近い地方から徐々に南下し、二年前この町で何個か売られたのを最後に途切れている。そして昨年近隣の港町。貴女方が上陸した港だ。そこでも何個から似たような魔石が売られた形跡があった。

 南下したのは戦から逃げるためだろうと思っていたが、にしてもその道のりは真っすぐ南へ進んで東に向かっている。このまま貴女方のいる島に行ったんだと推測したんだが……」

「……」


 まずい。わずかな情報でもかなり絞られている。取り繕っているが様子がおかしいと悟った後ろの護衛は気遣わしげにこちらを見ているようだが、この状況で助けを求める訳にもいかない。


「そちらに、魔石を生成できる者がいるのでは?」

「……!」


 その場から勢いのまま立ち上がると、向こうの護衛がすぐに警戒するが使者の男は「お優しい王様なことで」と小さくつぶやきつつも手を挙げて彼らの警戒を解く。

 わたしも軽く謝罪をして座りなおす。

 ここまで言って何を言ってくるのか想像できるが、わたしは男に無言で話を促した。


「貴殿は自分の兄弟の顔と名前をすべて覚えていると聞いたが」

「……話が飛びましたね。それが何か」


 わたしの兄弟はせいぜい十数人程度だと思っているのだろう。記憶力がないと侮っているのか、わたしではなく弟妹達の中に魔石を生成できる者がいると思っているのか。


「そちらには巨大な魔術陣があるらしいな」

「…………魔術陣の内容を知りたいのですか?」


 一瞬後ろに控えている甥の魔力が揺らいだ。本来ならばもう二千年以上も前の話だが、甥にとっては数年前の話だ。

 彼もわたしと同じで土地に魔力を注ぐために故郷から遠く離れた土地で眠っていた一人だった。


「いいや?それを聞いてなんになる。ただ、こちらとしてはその魔術を動かす犠牲リソースをこちらに寄こせば――」


 その先は続かなかった。男の姿は一瞬で消え、着ていた衣服が椅子や一瞬で床に散らばた。


「――あら」


 そしてわたしの手のひらには、色々な属性が混ざっているのか濁ったような赤みの強い茶色の魔石が転がっている。


「ここにあるじゃありませんか。あなた方が欲しがっていた魔石が」


 辺りはしんとする。

 後ろからは護衛で付き添っていた者がわたしを呼びかけたので振り返りその魔石を見せれば、彼らも酷く動揺した。


「ねぇ、どうでしょう。色々入り混じっていて、とてもじゃありませんが使いどころに困りますね」

「伯母上!」


 数本の剣と槍がわたしに向けられた。それは相手の国ではなく、わたしの護衛で付き従っていた者ばかりだった。


「……何事ですか白樺ベトゥラ


 視線だけを動かし白金の毛並みをした狼のベトゥラに問いかける。その顔は今はあまり思い出したくない弟の顔によく似ていた。


「今の貴女は危険だ。あちらだけでなく、こちらにも被害がないとは言い切れない」


 あちら側の使者も鉄製の筒のようなモノを構えている。見たことないものばかりで興味深かったが何かしらの仕掛けが起きる武器なのだろう。

 手を出せば動かしてくれるだろうが流石に周りを巻き込むわけにはいかない。


「そうですか」


 その後ベトゥラが執り成したことでこの会談は何も進展することなくお開きとなった。

 持っていても仕方がないため、使者の心臓だった魔石を返したが、あちらは受け取りつつも気味悪そうに布に包んでいた。


 その後発覚したことだが、使者だと名乗った男たちは本職の外交官ではなくただの軍人で、乗っ取って間もないこの国を一時的に管理しているだけの小物だった。

 今回の件も自分の手元に集まる金を欲しがったためにこの会談を母国の許可なく行ったらしく、なんともかしこまった謝罪と、あの話はなかったことにして欲しいと遠回しに記載された内容の文書があちらの国から送られて来たのだった。



―――



 夕方。島へ帰る船に揺られながら、わたしは首にかけられた魔力封じの首輪に触れる。

 あの緊迫した場でベトゥラが執り成したおかげで戦争にならずに済んだが、その後すぐ彼から「僕らでも貴女を抑えることが出来ないので」と言ってわたしに大きな首輪をかけた。

 本来不埒な輩を捕らえる為に用意したはずだったのにおかしいこともあるものだ。


 おかげで魔法で成長した姿も一瞬で解け、13歳の頃に止まった本来の姿に戻ってしまった。


 その様子を一部始終見ていた北の国の者達は更に動揺したので、ベトゥラが「このお方は13の頃から千年近く歳を取っておられないのですよ」と正直に説明をしたが、彼らは更にわたしのことを怪訝な目で見ていた。千年以上生きている人間がこの世界にわたし以外どこにもいないのだから疑うのも当たり前だ。

 しかしその中にいた茶髪の文官はわたしのことを違う意味で驚いていた。


<どうして、君が>


 唇だけを動かし、北の遊牧民の言葉で話していたのであの場ではわたしにしか分からなかっただろう。

 染めたのだろうか透き通るような白髪は茶髪にし短くなっていたから、わたしは分からないふりをしていたのに。


 あの交渉であの魔石を出したのも彼だろう。しかし、あの旅で彼の気配は一度も察知しなかった。

 戦争になれば必然的に遊牧民が迫害される可能性もあるだろう。そこから逃げて混乱の最中に国の要人につけ入り、あの立場まで這い上がってくることも彼なら可能だろう。

 しかしそれと同時にあの魔石を見つけてくるなんて、彼自身も自分の能力を慎重に隠していたようだが、その能力はそこまでの凄まじいものだったのだろうか。


 窓際で椅子に座り考えていると、後ろから甥のベトゥラが話しかけてきた。


「伯母上、二人で話をしませんか」

「……ゆっくりと休む時間もなさそうですね」


 しかし首輪を付けられている時点で監視の目は消えないだろう。ベトゥラと二人きりで話す分別に問題はないが。


『姉上。この記憶は封じられており、見ることはできません』


 己の正義のために、わざとわたしに嘘を吐いて両親の記憶を断固として見せなかったエライアーの記憶が脳裏に過る。

 彼はエライアーとパパルナの息子の一人で、北の地で殺されてしまったヴァイオレットの兄でもある。


 わたしは今までベトゥラにヴァイオレットの話を一度もしなかった。


 一度も話さなかったのはその出来事に紐づいて色んな事が思い出すので自分が傷心するからなのだが、彼もヴァイオレットが帰ってこないことに不審に思っているはずだ。


「島に戻ってから、貴女はどこか変わられた。以前の貴女は恨まれる行動はすれども、私情で行動することはなかったはずだ」


 魔法も種族も母の影響を強く引き継いでいるが、顔や性格は父であるエライアーによく似ており、己の意志を曲げないところすら父親似だ。


「以前から好き勝手動いていたと思いますけどね」


 母が生きていたころから、わたしは己の興味関心に釣られて島中のいろんな場所に放浪した。母はそんなわたしが父に似ていると言った。数少ない母との思い出だ。

 しかしベトゥラは「それでも、貴女の行動基準は『母の意思に反しないか』だった」と首を横に振る。


「眠りから目覚めた直後から全て、詳らかにしてくれませんか。ヴァイオレットのことも含めて」


 このタイミングでないと話をしてくれないと思ったのだろう。話が長くなることは承知の上だろうが、わたしは近くにあるランプに火を付けた。今は既に日が沈んだばかりだった。


 わたしは北の地で目が覚めてから島に来るまでのことを全て彼に話した。


 遊牧民の中に混じって一年程暮らしていたこと、彼らとの思考や感情の行き違いでパパルナが彼らに殺されてしまったこと、逃げるように遊牧民から離脱しようとしたら襲われて、自分に子供が出来て、でもこの島に上陸する前に竜人族に襲われてはぐれてしまっい、そして今もあの子たちが生きていると信じ密かに探していたこと。しかも今回の会談の使者の中にわたしの子供の父親がいることも話した。



「……」

「……あなたに話すべきことまで黙っていたことは謝罪します」


 ここまで話してわたしはテーブルに置いてあった茶を口にする。大分冷めていたが喉が渇いていたから全て飲み干す。

 ベトゥラは妹のことも含めて大分動揺していたようだが終始黙って聞いてくれた。今も内容を噛み砕いているのだろうか黙ったままである。


 窓の外の景色はすでに闇に染まっていた。夜の海は昨年の出来事を思い出す。


「――あの竜人族を追いやったのは、それが原因でしたか……」

「何か知っているのですか?」

「いいや、彼らはこの島に上陸した当初から覆う魔術を執拗に聞いていました。それに……」

「彼らの魔力核にはパパルナが口にしたはずの母の血肉の気配がしました。彼らがパパルナを殺したかどうかは分かりません。ですか、彼女の中にあったはずの母の力を何らかの形で取り込んだのは事実です」


 彼のその反応は、やはり彼らから気配だけは感じ取っていたが確証まではしていなかったようだ。魂や魔力の見方がわたしと彼では全く違うのだから無理もない。


「母の仇を取ってくれたことに感謝します……」


 パパルナが失踪した時、ベトゥラはまだ11歳の少年だった。

 当時は母の手から離れてもおかしくない歳だったが、その後憔悴した父や母がいなくて寂しがる年の離れた妹を見てきたベトゥラは母の帰還を待ち望んでいたのではないだろうか。


「あの件もわたしの私情です。パパルナが絡んでいようといなかろうと、わたしは彼らを許しはしなかった」


 この島は正直言えば大陸と比べてあまり文明や技術が発展していない。

 大陸からの物資がなければあちらと同じような生活水準で生きることはできないだろう。それゆえにあの船を狙った理由は分からない。

 だけどそんな理由云々無視して、わたしはわたしとあの子たちが彼らのせいで引き離されたことが許せなかったのだ。


「……あなたには、他に謝罪しなければならないことがあります」


 聞きたいことはすべて聞いたベトゥラはまだなにかあるのかと首をかしげる。

 わたしはずっと、誰にも話さなかったことを彼に伝えた。


「あなたの父を、エライアーを殺めたのはわたしです」

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