第65話 クリパ
「302!」
「にっ…254……」
終わってみたらこんなもので、結果はオレの圧勝だった。元々普段のテストの平均点でもオレが圧倒していたので、普通にやれば負けるはずないのだ。
それでも、わずかに負ける可能性を考えて勉強に取り組んだのは、本気になったアキの底力を予想できなかったからだ。
アキは得意の英語Ⅱとオーラルコミュニケーションでそれぞれ71点と75点、どちらもオレの得点より少し上だが大差はなかった。
一方、彼女が苦手としている数学は、Ⅱが50点でBが58点。オレが知っている限りで、過去の数学のテストはほとんど欠点だった気がするので、アキにしては十分がんばったほうなのだろう。
「あーもぉ……、シュウに負けたと思うとマジで気分悪い! もうちょいイケると思ったんだけどなぁ」
「負けるもなにも、勝負してないだけで過去のテスト含めてオレの全勝だろ? まあ、結果見るまではオレも『万が一』くらいには思っていたけど」
アキは負けたくせに文句をうだうだと言いながら下校準備をしている。
「ああ……、でもテスト返されるとき何人かの先生に褒められたのよね? 『やればできるじゃないか』ってさ、みんなしてアキちゃん舐めすぎなのよね?」
きっと先生方は、過去の点数と比較してアキが今回がんばったとわかったのだろう。オレも普段の平均よりずいぶんと良い得点を取ったが、なにも言われなかったけど。
「あっ! そうそう、言い忘れた。ナツキ姉さん、クリスマス過ぎるまで忙しいみたいだからちょっとの間、一緒にゲームできないって言ってたわよ」
「ナッキーさんてケータイ電話のショップで働いてるって言ってたよね。たしかにイベント事がある時期は忙しそうな気がするね?」
「そうだな。オレらはこれから冬休みだけど、社会人だとそうはいかないよな」
オレは下校中、時々目にするケータイショップを思い浮かべながら、ナッキーさんは普段どんなふうに働いているか考えていた。
「彼氏さんだっているんだから、この時期に私らとばっかり遊んでられないわけよ?」
「「えっ?」」
オレとユージは一度お互いに顔を見合わせた後、アキに同じ質問をしていた。
「「ナッキーさんて彼氏いるの?」」
「私は個別でけっこうメッセージやりとりしてるからさ、ちょっと前に聞いたのよ。そりゃ、あの性格で美人だもんねぇ。いなかったら世の男供の目ん玉、ビー玉と疑うレベルですよ?」
別にナッキーさんのことを女性としてどうこう思っていたわけではないが、急に距離が遠くなったように感じられた。表情から察するにきっとユージも同じだったんだと思う。
「ちなみに私もイブは、友達と夜にクリパの予定なんで次のノワモワはその先かなー」
アキに付き合っている特定の誰かがいるとは聞いたことない。ただ、なにかと交友関係の広い女のようで、大勢で集まってクリスマスパーティーをするのが決まっているらしい。
「……なぁ、ユージ。クリスマス予定あるか?」
「……ないよ。シュウは?」
「ない。……久々に2人でノワモワ2人協力でもするか?」
「……そうだね。久々にやろう」
オレとユージは妙に乾いた会話を交わすのだった。
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