第9章 師走とハプニング

第60話 やり方

 オレは高校生になってからあまり英語の勉強をしていなかった。中学生の時から苦手な科目ではあった。しかし、当時はなんとかその苦手を克服しようとがんばっていた。特にテスト前になると、英語の勉強にもっとも時間を費やしていた。


 しかし、いつも結果は奮わず他の教科と比較して明らかに平均点を下げていた。短期集中の勉強法では身に付かないと悟ったオレは、英語に限り授業後に家でしっかりと復習をして頭に叩き込むようにした。

 そして、テスト前の勉強時間も今までと変わらず英語に最長の時間を費やした。だが、そこまでしても英語の成績は大して伸びなかった……、いや、明らかに勉強時間の少ない他教科より劣る成績だった。


 この段階で当時のオレはこう考えた。


 オレの頭は英語を覚えるようにできていない、と。


 ただ、元の成績があまりよくないからなのか、英語はほとんど勉強をしなくても、そうでないときと大して変わらない点数が取れた。


 それから、オレは英語に限ってのみテスト前勉強をほとんどしないようになった。最低限、課題で出されている問題集を解く程度で終わっている。



 そんなオレがこの2年2学期の期末テストで、再び英語の勉強に多くの時間を費やしている。

 理由は当然、アキとの点数勝負があるからだ。もう1つの科目、数学に関してはどう転んでも負けない自信があった。だが、英語の点数次第では万が一もありえる。それは本当に「万が一」程度の確率だと思うのだが、他のことならともかく、勉強でアキに負けるのだけは嫌だった。


 ――というか、オレのノートを借りて帰る女子になぜ成績で後れをとらないといけないのか。そんなことはあってはならない。オレのアキに対するよくわからないプライドが英語の勉強に火を点けていた。


 しかし、中学生の時と変わらずこの教科だけはいくら勉強しても頭に定着しない。どうしたものかと考えていたところで、ふと先日のナッキーさんの言葉が頭に浮かんだ。



『――テストでいい点とるのが目標、そこに辿り着くにはどういったプロセスを踏めばいいかを考える。私はテストの意味ってそこにあると思うな?』



 やり方か……。中学生の頃からただがむしゃらにテスト範囲の問題集を解いて、単語を覚えて……、の繰り返しだった。よく考えたら結果が伴っていないにも関わらず、中学時代のオレは勉強方法をまったく変えていない。テストの点数が悪いのは勉強の「量」が足りていないと決めつけ、費やす時間を増やした。

 それでも結果が出ないと、自分は英語を覚えるのに向いていないと決めつけて勉強自体を放棄するようになった。それが現状だ。


 オレに必要なのは英語の勉強「量」ではなく、勉強「方」の改善なのか?


 今更と思いながら、オレはスマホでユージにメッセージを送った。


シュウ『英語の勉強ってどんなふうにやってる?』

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