第56話 延期
『みんなはそろそろテスト近いんじゃない? 勉強は大丈夫?』
夜、4人で協力プレイの難易度「天獄級」に挑んでいた。先日クリアしたステージとは難易度こそ同じだが別のステージだ。前回のような防衛戦ではなく、純粋に敵を全滅させるシンプルなステージだった。
『オレはぼちぼち勉強始めてます。1週間前はデイリー以外ノワモワ封印の期間にしようかと思ってます』
『僕もそんな感じです。ナッキーさんには悪いですけど、少しの期間お休みさせてください』
『なに言ってるのよ? 勉強サボってノワモワしてたら逆に怒るからね?』
『あー、今の言葉、アキにもっと言ってやってください』
期末テストの話題が上がってから、さっきまで饒舌だったアキは急に黙り始めてしまった。よほど勉強の話をしたくないらしい。
『アキちゃんは勉強嫌いなのかな? 私も学生ん時そうだったから気持ちわかるわよ?』
『さっすがナツキ姉さん! もうテストが近付くと気持ちが鬱になるんですよ?』
『ノワモワのイベントも1週間延期になったんだから大人しく勉強しろよ? 冬休みもまた補修とか嫌だろ?』
『ちょっとシュウ! またとか言わないでくれる!?』
本来なら今日、ノワモワの新しいイベントが実装されていた。ところが、実装直前でなにやら致命的なバグが発見されたようで、アップデートはまさかの1週間延期となった。
ユージに話を聞いてみたが、過去に数時間レベルのメンテナンス延長はあったらしいが、数日間の延期は前代未聞らしい。
『前向きに考えたらいいのよ? みんな集中して勉強できるでしょ? テスト終わってからイベントもガチャも楽しめばいいの? 協力プレイは私もクリアせず待っててあげるわ』
『ナツキ姉さん? マジメな話、高校の勉強とか大人になって役に立つんですか? 私……なんていうか、なんのためにやってるかわからないことってがんばれないんですよね?』
アキは珍しくまともな話をしている。この質問に対して、実際に働いてるナッキーさんからどんな返事がくるのかオレも興味があった。
『うーん……、はっきり言って全然役に立たないわ! 私の仕事の場合は……っていうのはあると思うけど』
ナッキーさんがあまりにはっきりと「役に立たない」と言うので逆にびっくりした。こんなこと言うとアキは本気でまったく勉強しなくなりそうだ。
『けどね、今高校生のみんなにはテスト勉強しっかりしてほしいなぁ』
『えぇー!? 役に立たないのにですか?』
『うん、学生の時の勉強ってね。内容より大事なことがあると思うの』
オレたちはちょうど今やっていた天獄級のステージをクリアしたので、そこで一旦ゲームを止めた。ナッキーさんの話がなにかとても大事な……、ながらで聞いていいような話ではないと思ったからだ。
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