第55話 様子見
「いやー、3,000万ダウンロードですよ! 1,000万の時もそうでしたが、行き着くとこまで来た感がありますよね!?」
クロエ ST-401-1730号、通称「1730号」は、休憩室で1822号と談笑していた。
今は、ゲームのメンテナンス中。翌朝午前6時には、ダウンロード数記念イベントがクリスマス要素を詰め込んだ期間限定イベントを兼ねて実装される。
メンテナンスの時間はクロエシリーズ安息の時間でもある。逆に、メンテナンス専門のステラシリーズ、ゲームバランス・難易度調整のジェイドシリーズは猫の手も借りたいほど大忙しだった。
「あくまでリセマラ込みの数字よ? 実際のプレイヤー数じゃないんだからね?」
「わかってますよ。でも、ダウンロード数だってゲームの知名度を示す立派な基準です。ダウンロード数に対して一定の係数を当てると、おおよその課金ユーザー数を導ける、なんて話も聞いたことありますから」
クロエ1822号は雑談を交わしながらも、このメンテナンス後の戦略について考えていた。いや、これは彼女に限った話ではなく、すべてのクロエシリーズに共通しているかもしれない。
「1822号は次のガチャどうする感じですか?」
「うーん、前回のガチャでスフィアは使い切ってくれたからね。課金へ導く絶好のチャンスだとは思うんだけど……」
3,000万ダウンロード記念にクリスマスイベント、さらに同じタイミングで4人協力プレイの難易度追加、課金してでもガチャを回したくなる要素は十分揃っている。
ただ、クロエ1822号……、いや、全クロエシリーズには昨年のこの時期の記憶が過っていた。ソーシャルゲームはリアルイベントに合わせてイベントを開催し、ガチャを追加することが多い。
実際、今回は偶然ダウンロード数が節目を迎えるだけで、それがなくてもクリスマスイベントは実装される予定だった。
ただ、12月はこの後に正月も控えている。近い将来に別のアップデートがほぼ確定しているため、このタイミングのガチャを渋るプレイヤーが多い。いわゆる「様子見」の姿勢に入ってしまうのだ。
この経験があるゆえに、今一つ課金誘導へ自信をもてないでいる1822号だった。
「今年はクリスマス以外に盛り上げる要素がいっぱいありますからね! 去年みたいな様子見にはならないと思うのですけど」
「うん。前回、破壊的な性能のキャラクター実装してたのに、今回も武器と属性変えてけっこう振り切ってくるみたいだから期待できるわよね?」
時間は午前5時、イベントの実装準備はほぼ完了しており、細かいデバックを繰り返す段階に入っていた。
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