第52話 防衛戦

『残り時間が1分になったらシュウは東へ、ナッキーさんは西の援護をお願いします。この時間帯は中央は放置しても大丈夫だから』


 ユージは的確に防衛戦の指示をくれる。みんなに、というよりはオレだけのために言ってくれている感じだ。最初の1分は数こそ多いものの、敵1体1体の耐久力はそれほど高くないようで、ホメ子さんの攻撃力と技の範囲をもってすれば、暇を持て余すくらいだった。城門のダメージもほとんど0に近い。


 残り1分の段階で、東西の門に他ステージでのボス級の敵が登場した。


『こいつら攻撃力高いのよね? シュウはとにかく1秒でも早く倒すこと意識してスキルがんがん使っていきなよ?』


 敵の出現を予期して攻撃するユージからはワンテンポ遅れてオレも全力で攻撃する。周りにちまちま湧いてくるザコ敵を通常攻撃で倒してスキル用のSPを回復させながら、ボス級の敵には強力な技をどんどんぶつけていく。


『よぉし! 残り30秒手前で両サイドの敵倒したわね? もうあとひと踏ん張りよ!』


 残り30秒になると、どデカいドラゴンが中央の城門の前に登場した。


『このドラゴンは倒せないんだ。溜めているときに一定のダメージを与えないと火を吐いてくるんだけど、それが無傷の城門でも2発くらいで壊すくらいに強いんだよ』


『尻尾で薙ぎ払ってくる攻撃は予備動作があるからしっかり避けてね? 門には届かないけど、プレイヤーが当たると即死級のダメージだからね! 1人でも脱落すると、ドラゴンのブレス止められないの』


『最初、このステージ実装された時は、火を吐くドラゴンだから絶対弱点は氷だと思ったのに、火が弱点なのよねぇ? 完全に騙された気分なったの思い出すわ?』


 ここまで進むとオレはもう無言になっていた。残り時間をチラチラと確認し、長い長い30秒、必死になってキャラを動かす。

 ナッキーさんの言う通り、尻尾で薙ぎ払ってくる攻撃は発動前にドラゴンがプレイヤーキャラを凝視して1秒ほど停止する。冷静にこの動作を見極めながらヒット&アウェイを繰り返す。


 東西の門付近にもザコ敵が少し発生していたが、3人揃ってそれは無視するように言ってきた。どうやらこのステージ実装当初は、そのザコ敵を倒しにいく派と無視する派で別れていたらしい。

 ただ、多くのプレイヤーの検証によって、ザコ敵は完全無視でドラゴンに全火力集中がもっともステージ成功率が高いと証明された。


 この辺りは経験者と意思疎通ができなかったらわからなかったところだろう。こうして話しながらゲームをできることに感謝しないといけない。



 残り時間は20秒、ザコ敵のちまちました攻撃によって城門は半壊していたが、裏を返せばまだ半分は残っている状態だ。


『ドラゴンのブレスさえ止め続けたら城門は耐えるから安心して! さぁ、もうちょっとよ!』


 ナッキーさんの言葉を聞いて、もう城門の残りHPは視界に入れないことにした。目の前のドラゴンへの攻撃へと集中する。

 残り時間は10秒、ここまでくると時間経過を秒単位で追ってしまう。刻一刻と迫るステージクリア。ドラゴンの動きはある程度規則的で、慣れてくると尻尾の攻撃を待って躱す余裕が出てきた。


 残り3秒、このタイミングでドラゴンのブレスを止められた。おそらく次の溜めがあってももう撃ってはこれない。


 2秒、1秒……、そして画面に大きく「Congratulation!」の文字が表示された。

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