第8章 最高難易度と変化
第50話 天井
12月、季節の秋はどの辺だったか? と思うくらいに急に気温は下がっていった。少し前までは、夏の暑さがいつまで続くのか、と話していたような気がする。
オレは1人用の小さな炬燵を引っ張り出して、そこに足を突っ込みながら恒例になった夜のゲームタイムを楽しんでいた。眠気の対策の意味合いも込めて、炬燵の電源はまだ入れていない。
ノワモワをやり始めて半年近く経過した。自分の凝り性は十分理解している。ゲームに手を付けてからは、ログインボーナスは確実にもらい、デイリーミッションもおそらく皆勤賞だ。
ユージ、アキ、ナッキーさんはリリース当初からノワモワを続けている。ゆえに、仮に同じ時間ゲームをやっていたとしても成長曲線は圧倒的にオレの上昇が激しくなるのだ。
スフィア消費による時間短縮でしか埋められない「ハウス」を除いて、オレは初期組の3人に追い付きつつあった。そして、唯一後れをとっているそのハウスに関しても大きな差はなくなっていた。
これはノワモワのハウスには現状の「天井」が存在するからだ。初期から熱心にハウスの増築をしているユーザーなら、かなり前の段階でこの天井を迎え、それ以上の成長ができなくなっている。
先行組の足並みが止まっている以上、後発組との差は縮まる一方だ。そのおかげで、今のオレは目に見えて劣る部分が無くなっていた。
『シュウが完全にクソザコお荷物キャラ卒業した感じよね? ちょっとつまらないんですけど?』
アキは煽る要素がなくなったオレを見て不満気の様子だった。弱ければ煽られ、強くなれば文句を言われる。一体どうしろと言うのか?
『私、最近思ってたんだけど……、シュウくんってこのゲーム上手よね?』
ナッキーさんの言葉にユージが賛同してくれた。アキは「下手ではない」としか言わなかったけど……。
元々、テレビゲームは人並みに……、いや、人並み以上にやっていた。ただ、ガチャの運に左右されるゲームを避けていただけなのだ。
いろんなゲームをやっていれば、少なからずインターフェイスが近いものにも触れている。1つひとつのゲームがもつ固有の「癖」とステータス的なマイナスを克服できれば、それなりにデキるようになる自信はあった。
『シュウの操作の腕前は飛躍的に上がってるよ、僕もそのうち追い抜かされそうだ』
『えー、シュウより私が下とか絶対あり得ないんですけど! それに操作面ならナツキ姉さんが最強でしょ!?』
『わからないわよ? やっぱりやり込みだすとゲームって男の子が上手なのよね? これからはシュウくんに助けてもらうことになるかも?』
3人の話を聞きながらオレは少しだけ気をよくしていた。半年やり続けてようやくここまで来た。ただ、先日ぶっ壊れ性能のキャラのおかげもあって、地獄級をクリアし、協力プレイは残すところゲーム内最高難易度の「天獄級」のみとなった。
ステータス的に天井を迎えている3人と、それにかなり近づいたオレ。4人揃って現状の最強キャラクターを所持している。ひょっとしたら最高難易度もいけるのではないか?
オレは3人に尋ねてみた。
「天獄級、この4人でやってみませんか?」
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