第47話 自己完結型

「あっはっはっはっはっ!! クソざまぁっ!」


 ガチャ沼にはまった翌日の放課後、アキに昨日の話をすると、軽く引くレベルの大笑いをされた。体育祭やら文化祭をきっかけに、密かにアキの評価を改めていたのだが、再び下降線に入ってしまった。


「もうシュウったら最高よね!? 清々しいまでの大爆死してんだからさ」


「いやいや、スフィアを使い切ったって言っても無課金分の話でしょ? ようやく入口だよ。『爆死』は課金して初めて使っていい言葉だと思うよ?」


 なぜかユージは「爆死」の使い方には拘りがあるようだ。彼の課金額を聞く限り、オレとは比較にならない爆死を繰り返してきたんだろうな。


 とりあえず、「人権キャラ」と一部では言われているホメ子さんを手に入れ、爆死の副産物であるプレミアム武器チケットによって、彼女の武器も手に入れていた。

 さらにガチャのキャラ被りによって4凸するのに十分なアイテムを手に入れ、オレのホメ子さんは戦闘の最前線に出ても恥ずかしくない性能になっていた。ハウスの補正はまだ追い付いていなかったが、それでもさほど気にならないレベルまでは到達している。



「まぁ、せっかくだからシュウもホメ子さんの性能確かめたいでしょ!? ナツキ姉さん今日の夜、時間とれるみたいだから4人で協力プレイしようよ?」


 アキの申し出はありがたい限りだった。彼女はどうやら個人的にナッキーさんと連絡を取り合っているようだ。姉のおかげなのか、多少女性慣れしているオレでも、そこまではちょっと敷居が高い。



 今は11月の下旬、体育祭と文化祭、間に中間テストが挟まってのイベントラッシュは終わりを迎えた。10月までは夏の暑さを引きずるような日が続いていたが、11月になると急に気温は下がりだした。

 ようやく、過ごしやすい季節の到来か、と思うとあっという間に肌寒く感じるようになっていた。


 そんな冬が顔を覗かせる秋の夜、オレたちはいつものように通話をしながらノワモワの4人協力プレイを楽しんでいる。

 今回は初めて4人全員が同じキャラクター、「ホメ子さん」を使っている。


「4人同じキャラで大丈夫なのか? このキャラの性能がぶっ壊れてるのはなんとなくわかるんだけど……」


『シュウくん、大丈夫よ。ノワモワの強キャラは基本的に自己完結型で攻撃に回復、自己強化も含めてなんでもござれ、が多いのよ。特に今回のホメ子ちゃんは強烈な性能してるわ』


 ナッキーさんに説明されると、なにか後ろ盾をもらった気分になる。今、オレたちが挑もうとしているのは、4人協力のステージ難易度「地獄級」。

 かつて、この1つ下の難易度「破戒級」で散々苦労した記憶がある。もっとも、当時はオレが足を引っ張っていたわけだが……。


 ただ、ユージやアキの話だと、破戒級と地獄級で極端な難易度の変化があるそうだ。今回は、強力なキャラクターを手に入れ、武器も手に入れている。初めての4凸まで行い、ハウスの補正も追い付いてきた。


 果たして初の地獄級、クリアできるのか……?

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