第7章 コラボと高難易度

第43話 ぶっ壊れ

「ホメ子さんはお見通し……?」


「シュウは『ホメ子さん』知らないんだぁ?」


 文化祭が終わり、イベント続きだった2学期の学校生活も一旦は平常を取り戻した。文化祭の一週間前くらいからは、陽が完全に沈むまで学校に居残りして、練習や準備をしていたので、ノワモワの進行も滞っていたのだ。


 その間にどうやらアップデートがあり、噂になっていたコラボイベントが実装された。コラボ先の作品名が「ホメ子さんはお見通し!?」、ファンタジー世界のノワール・グリモワールとは、相容れないタイトルの気がする。



 いつも通りの終礼後の教室、後ろを振り返ったアキは、ノワモワとコラボしたこの作品について教えてくれた。


 要約すると、ごく普通の高校生、通称「カラスくん」の周囲にはさまざまな特殊能力をもった学生が集まってくる。異世界から転移してきた勇者だったり、異能力者、暗殺家に除霊師……、とまあなんでもありの設定だ。

 そして、この特殊能力をもった学生の中心にいるのが正体不明の女子学生、通称「ホメ子さん」らしい。

 明らかに常識外の人間が集結しているのに、物語の観測者たるカラスくんは、周囲の異常にまったく気付かずお話は進み、ホメ子さんはさまざまなトラブルに巻き込まれながらも意図的なのか偶然なのか、難を逃れていくのだという。



 現在進行形の物語で、それなりに流行っているそうだが、残念ながらオレの耳にまでは届いていなかった。


 オレとアキが話していると、鞄を持ったユージもやってきて話しに加わった。夏休み明けからこの2人も校内で普通に話す仲となっている。


「シュウはもうコラボのガチャを引いたのかい?」


「いいや、引くべきかどうかユージとアキに聞こうと思ってたんだ。元の作品を知らないから思い入れはないんだけど……」


「ホメ子さん引くまで回すべきだよ」

「ホメ子さん引くまで回さないと人権ないからねぇ?」


 ユージとアキは示し合わせたように同じタイミングで同じ意味のことを言った。「ホメ子さん」はたしか今回のガチャのメインキャラクターだったかな?



 「ホメ子さんはお見通し!?」に登場するカラスくんを除いた主要5人が今回追加されたガチャのキャラクターだ(どうでもいいけど、カラスくんがちょっと可哀そうだな……)。

 元々の作品側ではこの「ホメ子さん」という女の子は、戦闘能力があるような描写はないらしい。だが、ノワモワのなかではプレイアブルとして、弓の火属性を扱うキャラクターとなって実装されている。


 そして、その性能は……。


「ぶっ壊れだよ」

「ぶっ壊れてるよねぇ」


 これまでのゲーム環境を破壊するほどの強力なキャラクターを形容して「ぶっ壊れ」と言ったりする。今回追加された「ホメ子さん」はまさにそのぶっ壊れに該当する性能のようだ。

 同属性の武器とエレメントを扱うキャラクターは、この子の実装によって完全に過去のものとなってしまったらしい。



「しっかし、ホメ子さんて原作だと意味不明の謎キャラ貫いてる感じよねぇ? このゲーム内の仕様、作者さん的にオッケーなのかしらねぇ?」


「さすがに許可なしには実装できないんじゃないかな? ゲームの業界の事情とかまでは詳しくないけど……」



 ユージとアキはともに原作をよく知っているようで、彼らの話題はいつの間にかそちらに移行していた。

 とりあえず……、貯めに貯めたスフィアをここで使う必要があることだけは理解できた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※「ホメ子さんはお見通し!?」は同筆者の過去作品です。もし、ご興味があればお読み下さい。本作との関りは一切ない作品ですが……(笑)。

URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330653190125408

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