第40話 コラボ
ステラシリーズとジェイドシリーズの動きが活発になっている。もう少しで新しい期間限定イベントが追加され、それに伴い新キャラクターと武器のガチャも追加される予定だ。
休憩室のほぼ定位置と化しているソファで休んでいたクロエ ST-401-1822号。彼女の席から1つ間を空けたところに1人のステラがやってきて腰を掛けた。
「お疲れ様、ステラさん? 今の時期あなたたちは大変ね?」
彼女たちは近くに同シリーズがいないときのみ名前で呼び合っている。
「お疲れ様です、クロエさん。いやぁー、今回はコラボレーション企画で、いつもと仕様が違うところ多いんですよ! 私たちも参っています、あはは」
ステラは額に手をやり、眉を八の字にして見せた。「困惑している」を言葉より表情で伝えてくれている。
「ジェイドさんたちも大変そうですよ、彼らはけっこう私たちと連携すること多いんですが、もう……なんていうか、殺気立ってますからね」
クロエ1822号はジェイドシリーズの顔を浮かべながら、わずかに表情を歪ませる。彼らも当然、個体によって性格に違いがあるのだが、総じて荒々しい者が多いのだ。
「けど、アップデートが終わったらきっとクロエさんたち大変ですよ! 今回のコラボレーション……、私からそんなに言えませんけど相当気合入ってるっぽいですから!」
そう言った後に、ステラは「あー、もうこんな時間っ!? 休憩しすぎちゃった!」と叫んで休憩室を出て行った。去り際にクロエに向かって軽く頭を下げていった。
ステラが出て行った後、ひとり部屋に残されたクロエ1822号は考え込む。過去にコラボレーションイベントの経験もある彼女は、当時のことを思い出していた。
『以前のコラボイベントはたしか、新規ユーザーが普段の比にならないほど増えていた。そして、しっかり継続プレイヤーにするためにガチャのキャラクターも強く、排出も少し緩めていたような気がする』
クロエ1822号は次に、自身の担当するプレイヤーについて考えた。直近で追加されたガチャを2回続けてスルーしており、スフィアの所持数は5,000を超えている。スフィアの保有数が増えれば増えるほど課金への道は遠ざかっていくのだ。
彼女は虚空を見つめながら祈るような仕草をしていた。
『願わくば……、コラボレーション先が私の担当するプレイヤーの興味あるものであってください』
目を開けたクロエは気持ちを切り替え、モニタールームへと戻る。
『次こそ……、そのスフィア根こそぎ奪ってやるんだから!』
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