第39話 全振り
高校生にとってやはり中間テストの存在感は大きい。1週間前期間になると、文化祭準備モードは一変して、皆テスト勉強モードに切り替わった。まだ10月の半ば、文化祭までは1か月程度の期間がある。
本来はこれが当然なのだろうが、うちのクラスは体育祭で優勝したことにより、変にイベント事に対して勢い付いてしまった感があった。しかし、中間テストが近付くにつれて、それが修正され現実に戻ってきた。
テスト前は、夜のゲーム時間も一時封印。アキは露骨に不満を述べていたが、ナッキーさんが説得して治まった。彼女が大人の女性で本当に助かっている。
オレは、ログインボーナスとデイリーミッションをこなすルーティンだけ欠かさないようにしながら、それ以上ゲームに触れないようにしていた。
2回続けて、追加のガチャを引いていないのでスフィアの数はどんどん溜まっていき、いつの間にか5,000個を超えている。この保有数になると、一定数のガチャを回すともらえるプレミアムキャラチケットの関係もあって、少々運に見放されてもほしいキャラクターを手に入れることができる。
次に強いキャラクターが追加されたら必ず手に入れよう、と意気込んでいたが、そう思ってからはなかなかほしいと思うキャラクターが実装されない。
スフィアの所有数に余裕があると、ちょっとくらい使っていいか、という気持ちの隙が生まれてしまう。
時々起こるガチャを引きたい欲求と戦いながら、オレは今テスト勉強に集中していた。「ガチャ」には一種の中毒性があるのだろう。
テストの結果は、例によって苦手科目の英語を除いては上々。特に数学は比較的得意な分野でいい得点を取れた。テスト前期間だけでもゲームを封印したのは正解だったのだろう。
ユージはいつも通りで、全教科が80点を超え、90点以上の割合が多いくらいだった。勉強に困ったら彼に相談しようと決めている。今のところ、そこまで行き詰ったことはないのだが。
アキは決して「いい成績」とは言えなかったが、1学期のテストの得点からは平均で10~20点くらい上がっているようだった。文化祭の準備に熱を入れていたので、むしろ下がってしまうのでは……、と内心わずかに心配していたのだが、結果は真逆だった。
「センセーにテストの成績悪かったら文化祭の実行委員外されるって言われたのよ? まったくこんな脅しみたいなの許されるのかしらねぇ?」
後に彼女はそんな話をもらしていた。その気になれば勉強も案外がんばれるわけだ。彼女に、テスト結果が悪かったらノワモワ禁止、の制約を設ければ飛躍的に成績上がったりするんじゃないだろうか?
「さぁ、テスト終わったんだからこっからは文化祭準備に全振りでいきますかぁ?」
テストから解放されたアキは、数日ぶりに陽の光を浴びた植物のように萎んでいた元気を急速に取り戻していった。
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