第31話 再登場
新学期の初日、朝いつも通りに教室に入るとオレの机にアキが足を組んで座っていた。なんでこの女は「席」ではなく、「机」に座るのか……?
「おっはろー、シュウ。 数学の課題ホント助かったわ、マジで死ぬかと思ったんですけど、命拾いしたって感じ」
「あんまり堂々と言うな、アキが怒られても知らんけど、オレは巻き込まれたくないからな」
先日、彼女からメッセージが届いた後、結局オレは数学の課題をスマホのカメラで映してアキに送った。彼女の今後を考えれば、「自分でやれ」と言うべきなのだろうが、残念ながらオレはアキの親でもなんでもない。
将来、彼女が困ったところで知りはしないが、きっと世渡り上手いタイプなんだろうな、とも思った。
「あれあれぇ、シュウさんちょっと
夏休み明けにはたしか学力テストがあったはずだ。大体この手のテストは夏休みの宿題とよく似た問題が出題される。アキにその話をしたら、とてもわかりやすい不快な表情をして見せた。楽するのは自由だが、つけは必ずまわってくるものだ。
「そんでさぁ、シュウは水着ガチャ引くつもりなの?」
ユージと電話で話した2日後に水着キャラクターのガチャは実装された。過去に一度登場した人気キャラクター6体が武器の種類とエレメントを変えて再登場しているようだ。
ただ、どのキャラクターもオレにとっては初めて見るものだったので、思い入れはなかった。
「ちょうどいい。課題のお礼に、今回のガチャを引くべきかの見解を聞かせてくれ?」
アキはオレの目を見た後、にやりと笑ってから話し始めた。ノワモワの話をするのが本当に好きらしい。
「はっきり言って性能面はイマイチよねぇ……。エロ目的じゃなかったら引く必要ないんじゃない? けどまあ、シュウみたいに持ちキャラ少なかったちょっとくらい回してもいいんじゃないかなぁ?」
おおまかな見解はユージと一致している。「エロ目的」とか言っているので、引いたら引いたで散々煽り散らされる未来が見えた。もっとも、いい加減慣れてきたのだが……。
アキとユージ、それにナッキーさんのおかげで、極端な高難易度のステージを除いて今のところゲームの進行に苦労はしていない……というか、ストーリーモードに限ってはアップデート待ちのところまで来てしまったくらいだ。
前回のガチャでスフィアを1,000個消費した経験もあって、思い通りのキャラクターを手に入れるのがそんなに甘いものじゃないと理解できた。それなら尚更、次に強力なキャラクターが実装された時に備えて、スフィアは温存しておかなくては……。
オレは、0円の意味での「無課金」を貫くの決めたのだから。
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