第6章 リアルイベントとナッキーさん
第28話 無課金
ファミレスで出会って以来、オレとユージ、アキにナッキーさんを入れての4人でノワモワをするようになった。オレたちは夏休み期間だったので、主にナッキーさんの予定に合わせてチャットアプリのグループ通話をしながらゲームを楽しんでいる。
ナッキーさんはこちらが驚くほどに気さくで遠慮のない人で、こちらの緊張はすぐにほぐれていった。アキはすぐにナッキーさんと打ち解けたようで、「ナツキ姉さん」と呼んでいる。ユージはオレよりも馴染むのに時間をかけていたが、それでも気付いたら普通に話せるようになっていた。
「シュウはナッキーさんとよく普通に話せるね? 僕はなんだか緊張してしまうよ?」
「ああ、オレは姉ちゃんいるからかな? それほど抵抗ないけど?」
「シュウってお姉さんいるんだ! 知らなかったな……」
ユージとは2人だけでこんな会話を交わしていた。姉がいるといっても今はもう家を出て、独り暮らしをしているのであまり顔を合わせていない。歳は9つも上なのでナッキーさんよりも年上だ。
オレが女性と話すのにあまり抵抗がないのは、ひょっとしたら幼い時、姉に面倒を見てもらった影響があるのかもしれない。
『ナツキ姉さんは働いてますもんね、やっぱり課金してる感じですかぁ?』
『そうね、ちょっとは課金してるわよ。だけど、学生のみんなはガチャとかあんまり深追いしたらダメだからね?』
ユージに突き刺ささりそうな一言だと思った。彼からの反応は特に返ってこなかったけど……。
『ゲームにお金をかけるのは悪いことじゃないのよ? 趣味にお金かけるのと一緒なんだから』
『そうですよね、僕もそう思います』
『無理のない課金が大事なのよ、無理のない課金……、略して無課金よ!』
「無」理のない「課金」……、なんかとんでもない造語が飛び出した。ただ、発想と言葉選びが絶妙でおもしろい。話題もこちらに合わせてくれるし、年上だからと変に偉ぶるところもないし、本当にナッキーさんは親しみやすい。
それにくわえて、この人のゲームスキルは本当にすごい。キャラクターのステータスという意味では、天井に到達しているユージとほぼ一緒なわけだが、そのユージ本人がプレイスキルで圧倒的に負けている、と言っている。
プレイ期間の短さゆえ、ハウスによるステータスの補正が少ない分、オレはオートマッチングでの協力プレイ参加は敬遠していた。だが、ナッキーさんが加わったことで見知った人と固定で組み、話しながら4人協力を楽しむことができる。これはとても嬉しかった。だが、それと同時にこうも思うようになった。
ひょっとしてオレがもっと強くなれば地獄級、天獄級もいけるのではないか……と。
オレのそんな心中を見透かすように、アキは4人で通話していても変わらずに煽ってくる。
『シュウがザコ卒業してくれたらもうちょいムズいとこもいける気がするんですけどねぇ。あーあ……、フレイヤ4なら地獄級いけんじゃないかなぁ?』
『シュウくん、別に無理に追いつくことないからね? ソシャゲなんて自分のペースで好きに進めたらいいんだから!』
ナッキーさんの大人なフォローが入ったので、アキの煽りも少し衰えてしまったようだった。
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