第23話 プレミアムキャラチケット

「あはははははっ!! シュウってば大爆死じゃん! クソざまぁ!!」


 アキは大声を必死に抑えながら大笑いをしている。この女には恩義こそ感じてもらっても、怨みを買うようなことをした覚えはまったくないのだが……。


 他人の不幸は蜜の味、とはよく言ったもので、目の前にこれほどわかりやすい不幸があると笑いたくもなるのかもしれない。アキに関しては、むしろこの瞬間を待ってた節すらあるけれど。


 オレのガチャの結果はなかなか悲惨なものだった。10(+1)連ガチャを1度引いてSSランクはなし。たった1度のガチャで人のブレーキは壊れてしまうものなのか、あと数回は10連を引いてもスフィアは余裕だと思って続けて2回……、こちらも当たりなしで終わった。


 このゲームの10(+1)連ガチャを引くと「スタンプカード」なるものにスタンプが貯まっていく。スタンプ3つで「プレミアム武器チケット」がもらえ、これはSSランクの武器1つと交換できるアイテムだ。

 注意点はあくまで「SSランクの未所持の武器と交換」であって、種類を指定できるわけではない。オレはそれを使ってフレイヤの武器を手に入れた。


 こうなったら意地でもフレイヤのキャラクターを手に入れたくてさらに10(+1)連ガチャを引く。ここでも2回続けて当たりを引けず、スタンプ5つで「プレミアムキャラチケット」が手に入った。


 これは武器と同様にSSランクの未所持キャラと交換できるアイテムだ。ただし、これも指定できるわけではない。オレがこのチケットで手に入れたのはなんとライディース。キャラクターとしては決して弱くはないのだが、扱う武器が違うために前に手に入れたフレイヤの武器は装備できないのだ。


 つまり、スフィア1,000個を消費して手に入れたのは、新キャラクターのライディースと、同じく新キャラクターのフレイヤの武器のみ、といういびつな組み合わせだ。


「まぁまぁまぁ……、仕方ないんじゃなーい? シュウはその前の引きが良すぎたからさぁ、あっはは!」


 たしかにアキの言う通りでロゼッタとその武器の引きに関しては運が良すぎた。幸運が続くと、そういう星の元にあるような妙な錯覚に陥ってしまう。だが、現実はそうはいかないものだ。確率は必ず収束する。ゆえに幸運が続けば必ず不運がやってくるのだ。


「いいじゃんいいじゃん、こんだけ引いてもまだ3,000スフィア残してんでしょ? まだまだ余裕っしょ?」


 オレはとりあえず頭を冷やすためにドリンクバーで氷をたっぷり入れたコーラを入れてきた。それを一口飲んで一旦ガチャの画面を閉じることにした。


 シュウが肩を軽く叩いてきたので、慰めの言葉でもくれるのかと思った。だが、彼が発したのは意外にもまったく逆の言葉だった。


「シュウ、甘えるな……。僕なんか毎回こんな感じだ。それに課金して手に入れたスフィアでもないなら、いくら消費したって『爆死』とは言えないよ?」


 その言葉にアキの大笑いもピタッと止まった。さすがバイト代をガチャに注ぎ込みまくっている男である。言葉の重みが違う……。

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