第20話 10(+1)連ガチャ

 学校の近くにあるファミリーレストラン、お昼時を過ぎた時間にオレとユージ、アキは集まった。ピークの時間をちょうど過ぎたタイミングのため、中はかなり空いている。

 昼食はオレとユージはハンバーグのセットを頼んで、アキはシーフードドリアを食べていた。全員ドリンクバーを頼んで、食べ終わった後はそれで繋ぐつもりでいた。


「やっと補修が終わってさぁ、開放感が半端ないわけよ?」


 アキは、黒いメッシュのノースリーブを着ている。もちろんインナーにも同じく黒のタンクトップを着ているので透けて見えてるわけではないのだが、目のやり場に困る服装だと思った。それは隣りに座ったユージも同じようで、時々苦笑いした表情をこちらに向けてくる。


 オレとユージはどちらもシンプルな柄の入ったTシャツとジーンズという恰好で、アキの服装を見たとき、おしゃれのセンスの差を感じてしまった。


「灰原くんてシュウと仲良いんだね? とりあえず私もフレンド登録しといてよ?」


 ユージとアキはスマホの画面を見せ合い、ノワモワのフレンド登録をしている。オレは薄いコーラを飲みながら自分のスマホもノワモワを起動させた。


「2人はもう新しいガチャは引いたの?」


「わぉ、灰原くんってばもうフレイヤ手に入れてレベルも上げきってるじゃん! やるねぇ?」


 フレンド登録をすると、メインで使っているキャラクターのアイコンが表示される。ユージのアイコンは先日までロゼッタだったが、今は新キャラクターの「フレイヤ」に変わっている。


「スフィア切れてたし、今回も引き悪かったからけっこう課金したよ……。けど、今回のステージ、完全にフレイヤ接待だから手に入れた甲斐はあったけどね」


 ユージは今回の新キャラクターを手に入れるのに使ったスフィアの数を話している。その数を仮にすべて課金で手に入れたと仮定すると、それなりの額面を費やしていることになる。


「灰原くんなかなかガチってますねぇ? これはいいお仲間手に入れた感じだわ。協力プレイ頼りにしちゃうから」


 そう言いながらアキは、10連ガチャの画面を開いていた。「10連(+1)ガチャスタート!!」のボタンが光っている。


「なんだ? またガチャのスタートボタンを押させる気か?」


「いやいやぁ、2人ともノワモワにハマっちゃってますからねぇ……。もう指に邪念が入っちゃってるわよ」


 そう言って、彼女は右手の人指し指でスタートボタンをタッチした。長い付け爪が同時に画面に当たって「コツン」と小さい音がした。


「まあ見てなさいって……。アキ様の神引きを見せてやるからさ……」


 アキのスマホの中で、重厚な両開きの扉が開き、古い書籍が山積みされた部屋に入って、そこから大量の本が浮かび上がった。本の表紙は金色に輝くものと銀色のものが混在している。

 アキとユージは一緒になって画面を覗き込みながら、金色の数を数えている。その数が10連(正確には11連)の中でSランク以上確定の数となる。金色の数は7つ、それなりに多い方のようだ。


 そして、画面は切り替わり1冊1冊の本が開かれてそこからキャラクターが登場する。他人のゲーム画面でもガチャの瞬間は独特の緊張感と高揚感があった。


 そして、アキの10連の結果は……。

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