第19話 追加イベント

 1学期の期末テストが終わり、高校はそのまま夏休みに入った。中学校から英語が苦手科目で平均点スレスレだったが、それ以外は悪くない成績だった。ユージは1年の時から学年で上位の成績を残していて、今回のテストもバッチリだったようだ。


 一方のアキは、唯一得意としている英語以外は壊滅状態。ノートを貸しているこちらが責任を感じるほど無残な結果だった。中でも絶望的だった数学に関しては、夏休み最初の1週間、補修が決定したようだ。


 部活に所属していないオレは、夏休みの予定が白紙だった。まず最初の一週間で課題を終わらせるのを目標にした。小学生の頃から競うように、長期休暇の課題を早く終わらせていた。それは今でも変わっていない。



 ノワモワは狙いすましたように、期末テストが終わった翌日にアップデートされた。夏休み期間はその気になれば、いくらでもゲームに時間を費やせてしまう。それを自制する意味で、普段なら学校にいる時間ではノワモワを開かないと決めている。追加された期間限定イベントもちょうど夏休みいっぱいできるようなので、焦ることはなかった。


 新しいキャラクターや武器の性能は気になるところだったが、それらを調べだすと頭がゲームにもっていかれてしまう。なんとか夏休みの課題が終わるまでは、ゲーム漬けの休みにならないように注意しようと思っていた。

 特に協力プレイのステージに関しては、ユージやアキと話しながらやった方が楽しいと思ったのであえて手を付けないようにしている。



アキ『明日空いてない?? ファミレスでノワモワやんない??』



 夏休みに入って一週間経ったある日、アキから連絡が入った。ちょうど数学の補修が終わったタイミングなのだと思った。アキとは学校の放課後によく話をしたり、リモートで通話をしながらゲームをする仲ではある。

 ただ、学外で約束して会ったことは一度もなかった。なにか理由があったわけではないが、彼女からのメッセージに対してオレは即答を避けた。


 すると、スマホに別のメッセージが入った。今度はユージからだ。



ユージ『ノワモワの新しいイベントやってる? よかったら協力プレイ一緒にやらないかい?』



 ユージからのメッセージは日時の指定はなかったが、アキと同じくノワモワで一緒に遊ばないか、という誘いだ。オレはユージのメッセージも一旦返信を保留した。



シュウ『明日空いてるけど、もう1人ノワモワやってる友達連れて行ったらダメか?』


アキ『???』


『誰?? ワタシが知ってる人??』


シュウ『同じクラスの灰原雄二』


アキ『ああ灰原くんか』


『灰原くんがいいならワタシはOKよ??』


『わかった、ユージにきいてみる』



 アキにユージと一緒はどうか、と訊いたのは単なる思い付き。どうせなら3人で顔突き合わせてやった方が楽しいと思ったからだ。



シュウ『明日空いてないか? アキとファミレスでノワモワやろうって話しなってるんだけど、一緒にどうかと思って……??』


ユージ『片桐さんと??』


『僕も一緒に行って大丈夫なの??』


シュウ『アキはいいって言ってる』


ユージ『OK! 片桐さんがいいなら僕は大丈夫だよ』


シュウ『わかった、詳しい場所と時間はまた連絡する』



 こうしてオレとアキ、ユージの3人で明日、学校近くにあるファミレスで昼食をとりつつ、ノワモワをすることに決まった。新しいイベントの情報もあえてあまり触れないようにしていたので、明日はそこについても2人に思いっきり聞こうと思った。

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