第10話 戦闘システム

 ノワモワの戦闘は非常にシンプルだ。画面は、基本的にプレイヤーのキャラクターを中心にして鳥の視点で、空から見下ろす感じだ。画面を指でなぞった方向にキャラクターは進んでいく。その場でタッチをすると一番近い敵や対象物に向かって通常攻撃を行う。


 フリックをすると、横っ飛びをして回避行動をとる。回避行動中は敵の攻撃判定を無効化できるが、キャラクターごとにスタミナゲージが設定されていて、横っ飛びをするごとに消費していく。0になると回避行動を一定時間とれなくなるが、普通に移動したり静止していると次第にスタミナは回復していく。


 画面を押し続けると、2時、6時、10時の方向にコマンドが表示され、その方向に指をスライドすることでキャラクターごとに設定されている特殊能力や必殺技が使えるようだ。

 これらには「SP」というゲージを一定量消費する。SPは通常攻撃で敵を攻撃することで回復する仕組みだ。



 オレはユージと別れて帰宅した後、早々にノワモワのアプリを立ち上げてストーリーを進めることにした。普段なら学校の課題を先に終わらせてから遊ぶのだが、自分の中で逸る気持ちを抑えられないでいた。ゲームアプリでこんな衝動は珍しい……、というか、過去になかった。

 アキやユージと話して、一緒にやりたい気持ちが芽生えてきたのかもしれない。



 ストーリーは、突如廃墟と化した魔導王国ヴァレンシアを調査しにやってきた隣国の魔導調査隊が次々と連絡を絶つところから始まる。その調査隊の1つに主人公「クロエ」が属している設定だ。クロエが属している部隊は突然の霧に包まれて、彼は他の仲間とはぐれてしまう。


 1人になった彼は廃墟のヴァレンシア王国を彷徨いながら、記憶を失った謎の少女「ワルギリア」と出会う。彼女がゲームのアイコンに映っていた白髪の女の子だ。彼女はなぜか、ヴァレンシアの廃墟に蔓延る魔物から狙われており、成り行きからクロエは、彼女を守るために戦うことになる。ここからプレイヤーのゲーム操作が始まる。


 オレの操作キャラクター「ロゼッタ」は、あくまでクロエが歴史書から実体化させた設定で戦う。最初のステージだから当然なのかもしれないが、通常攻撃の一撃でどの敵も確実に仕留めた。

 必殺技の1つを使うと直線状に氷のレーザーを約2秒照射できる。このレーザー照射中に画面をなぞると、その照射方向を動かすことができ、指で軽く円を描くと周囲の敵をそれだけで殲滅できた。


 呆気ない、味気ない……、といった感じで、最初のステージはすぐにクリアできた。ステージの中身はあっさりだったが、クリア報酬はそれなりでガチャを引いたり、途中で戦闘不能になった際のリトライに使うスフィアが5個手に入った。

 どうやら初めてクリアするステージは、必ずスフィア5個入手できるようで、ストーリーを進めていくだけでもそれなりにガチャを引ける仕様になっている。


 オレはノワモワをプレイするとき、ある決心をしていた。「基本無料」を謳っているゲームでは、それをどこまで貫けるかがある意味で続けられるかどうかの分岐点だと思っている。


『絶対に課金はしない、無課金を貫いてみせる!』


 オレの決意はこれだった。

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