第2章 内なる世界とシリーズ

第6話 ????

 真っ暗で巨大な部屋の中、モニターの画面の光だけが無数に、そして規則的に並んでいる。大企業のコールセンターのように1つの画面の正面に1人ずつ人が座り、モニターを見つめている。

 皆が共通して、ロボットアニメのオペレーターを連想させる瑠璃色を基調とした服装をしている。周囲を囲む未来都市を思わせるような機械の数々を見ると、そこは大国の諜報機関の一室のようにも見えた。


 モニターを見つめていた1人の女性が席から立ち上がる。彼女はオレンジ色に近い茶髪の髪を肩の辺りまで伸ばしていた。よく見ると他のモニターを見つめている人たちの後ろ姿も彼女の姿によく似ていた……、いや、同じと言っても過言ではなかった。


「クロエ ST-401-1822号、プレイヤーが就寝したようなので休憩に入ります」


 彼女はそう言うと、自動ドアをくぐり「REST ROOMS」と書かれた部屋へと入っていった。そこは彼女たちの休憩室のようだ。


 部屋の中には、黒革の大きめのソファがいくつか設けられており、彼女はそこに身体を預けるように腰かけた。腕を組んで、天井を見上げひとつ息を吐き出したところで、その正面に同じ姿をした女性が立ったことに気付いた。


「お疲れ様です、1822号。今回のプレイヤーはいかがですか?」


 話しかけた女性の胸元には「ST-401-1730」と書かれた名札があった。ソファに座っている女性の方にも同じものがあり、番号は「ST-401-1822」と表記されている。


「どうだろう? 全然進める気配なくアプリ閉じちゃったからわかんないなあ?」


「たしか今回はいきなり『ロゼッタ』出してあげたんですよね?」


 末尾1730の名札の女性は、1822号の隣りに座った。まったく同じ容姿をした2人の女性が隣り合って言葉を交わしている。話し方や表情には微妙に違いがあった。


「うん、前回はレアキャラ出し渋ってたら消されちゃったからさあ、やり方変えてみようと思って……」


「リセマラさせるのは時間の無駄と私も思っています。まずは強いキャラを掴ませてゲームを快適に遊んでもらわないと、ですね。課金誘導はそこからですよ!」


 1822号はうんうんと頷きながら、1730号に話を振った。


「そっちはどうなの? そこそこ継続してくれてるプレイヤーだったよね? 課金は続けてくれてる?」


「はい! なんかオカルトチックなこと信じてるプレイヤーさんみたいなので、他人の指で10連引いてくれたときはレアキャラを出すように調整してます!」


「いいプレイヤーに当たったみたいね……。けど、1730号はすぐ向こうに情が移っちゃうとこあるから気を付けてね? レアの排出あんまり甘くすると上からお叱りくるからさ?」


 1730号は心得たとばかりに深く何度も頷ていた。



「あー! クロエさんたちっ! おっ疲れ様でーす!!」



 自動ドアが開いたと思うと、ピンクのロングヘアーをなびかせた幼い顔立ちをした女性が元気のよい声とともに入ってきた。服装は、クロエたちと同じ瑠璃色の制服を着ている。


「ステラ8823号さん、同系統のコンシェルジュがいるときは番号を付けて呼びましょう? ここにクロエが何人いると思ってるの?」


「えー、だから『クロエさん』って言ったじゃないですか? お堅いんだから、クロエ1822号さんは」


 そう言ってステラ8823号は、2人のクロエの会話の輪に加わった。

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