第5話 コンシェルジュ

 夜11時過ぎ、夜ご飯や風呂、学校からの課題を一通り終えたオレは部屋のベッドに寝転びながらスマホの画面を眺めていた。

 今は6月の下旬、エアコンをつけるほど気温は高くなかったが、湿気の多い夜だった。網戸にしている窓からしとしとと小雨の降る音が聞こえてきていた。


 オレが引き当てた「ロゼッタ」は、今やっている期間限定イベントのメインキャラクターで、絵で見た「鎌」は「斧」の扱いとなっており、エレメントは「水」だった。攻略サイトの情報を見てみるとやはりイベントのボスは、斬属性の水、が弱点のようでこのロゼッタで乗り込むと容易に討伐できるらしい。


 ただ、逆にロゼッタを除くと直近のガチャで斬属性と水の組み合わせはいないようで、この組み合わせで挑まないとイベントボスは非常に強敵となるようだった。


 また、ストーリーモードは強いガチャキャラクターをもっているとほとんど詰まらずに今現在の最後まで進めるようだ。


「とりあえず、ストーリーを進めてみるか……」



 ノワモワについてあらかた調べ尽くしたオレは、アプリを立ち上げた。お出迎えをするようにコンシェルジュのクロエが顔を出してお辞儀をしている。


『おかえりなさいませ!』


 そういえばコンシェルジュについてはまだ調べていなかった。学校でアキが「非表示にしている」と言っていたくらいだからそれほど重要な機能ではないのだろうが……。



 コンシェルジュは、女性2人と男性2人の計4人のキャラクターから選べるようになっており、主人公の性別を男にすると最初は勝手にクロエが選ばれるようだ。

 他のキャラクターは、ピンクのロングヘアーの女性「ステラ」、黒髪眼鏡の男性「ウィリアム」、金髪トゲトゲ頭の男性「ジェイド」の3人。


 誰を選んでも吹き出しの台詞が多少変わるだけで機能面に変化はない。ゲームのチュートリアルを呼び出せたり、一部の機能のショートカット設定ができる。しかし、場合によっては操作の邪魔になることもあるようで、ゲームに慣れてきた人は非表示にしていく傾向にあるようだ。


 コンシェルジュ4人はストーリーを進めていくと登場する人物だ。だが、プレイアブル化しているキャラクターはいないようで、あくまで「コンシェルジュ」としてのみ触れることができる。


 ゲームの初期段階ではクロエかウィリアムの2択のようで、オレはそのままクロエを継続して画面に置くことにした。コンシェルジュについて攻略サイトで調べていると、機能面以外では、画面を長時間放置しておくと居眠りをしたり、スマホを振ると驚いたりするといった演出があると記されていた。

 オレはゲームを進める前にそれらの演出を一通り見ようと思って、ノワモワの画面をしばらく放置していた。

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