【第三回】 正義の門
今回は、朝斗 真名 様の「正義の門」をレビューします。
作品はこちらです↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054917654996
それでは、読んでいきましょう! よろしくお願いします!
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シンプルで分かりやすいタイトルですね。声に出して読みたくなるかっこよさがあります。
中世ヨーロッパをモデルにした異世界ファンタジー、宗教にまつわるお話ということで、登場人物の宗教観の違いなどに注目していくのかなと予想しました。
ネタバレなしの解説があるようなので、そちらも読みました。
話の持っていき方が上手ですね。正直私も宗教と聞くと、なんか難しそうだなーって思います。ですが、この作品は、“究極の二択を迫られたときにどうすべきか”というような葛藤をどう乗り越えるかに重きを置いているようなので、そこまで深く宗教の価値観を押し付けるストーリーではないよ、ということですね。
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【一話目】⌘第1話 神依士見習いと孤児のミナ
第一幕の第一章の一話目です。かなり先の展開まで構想を練られていることがわかります。
ミックと父が長椅子を下ろしているところですね。映像として浮かんできます。
「時刻としては~」とあるのですが、少し違和感がありますね。
“としては”という言葉にはいくつか意味がありますが、どれをとっても合わないきがします。「朝日が昇って~」だけでも十分伝わると思います。
石造りの古そうな建物、窓が執拗に閉ざされていますね。ここまで閉鎖的な空間を作り出す理由とは……
「ひいふうみい~」はミックが数えている様子ですかね。可愛らしい表現ですね。
神堂って結構広かったんですね。長椅子を下ろしても下ろしても終わりが見えないのにも納得です。
「神堂と共に自分の肺の空気も入れ替えた」、素晴らしい表現ですね!
扉を開けた途端、新鮮な空気が一気に入ってきたことが読み取れます。
ミックはルクス教を強く信仰しているんですね。
ミナの容姿、兄との関係性から、不穏な空気が感じられます。
ミックとミナがルクス教を重んじていることも、ところどころの文中から伝わってきますね。
多くの闇を抱えているようなミナですが、彼女が今後どう動いていくのか、気になるところです。
【二話目】⌘第2話 戦ってはならぬ 殺してはならぬ
昼餐会に集まった人々は宗教に縛られて生きているように見えますが、そんな生活を続けていくことに辟易しているみたいですね。
劣悪な暮らしの中で不満は募る一方。ユス教に蹂躙されてもなお「教え」を守ろうとする父は、心の中で何を考えているのでしょうか。
神堂を念入りに閉鎖していた理由は外部からの侵入を防ぐためだったんですね。
ここまで何度も「ルクス像」が登場していますが、どんな見た目かがわからないですね。「重い銅像」とあるので大きそうではありますが、それがどのような形で、どのような扱いをされているかがはっきりとしません。大切に保管されているのであれば、扉の前に重石として置いておくのは危険な気がします。扉が破壊されたときに一緒にお亡くなりになりそうで……
と思ったら、このエピソードの中で見た目がなんとなくわかりましたね。
もう少し前に描写しても良いのではないでしょうか。読者がまだイメージできていない物体を動かしたり、足元で跪いたりしても、漠然としていて理解しづらいと思います。
宗教は結局のところ人間の創造物でしかない。だから、人間の生き方が変わってしまうと宗教の教え(正しさ)にも疑問を抱くようになる。
そのときに自分はどう生きるのが正しいのか、その答えがそろそろ導かれそうですね。
【三話目】⌘第3話 次の日曜日
ミナが神堂にやってくるところまでですが、冗長すぎるような気がします。その理由は、文章が平坦だからです。“こういうことがあった”、“今日はこんなことをした”といった、説明のようなパートがエピソードの半分あたりまで続き、物語の大きな展開がないので、読者が考えることがあまりないのだと思います。
この物語は三人称一元視点で進んでいますよね。
「かわいそうなミナが~」の部分ですが、「かわいそうな」に違和感を覚えました。
それはなぜか。何時間も考えたのですが、答えが出ませんでした……
なんか変に思えるんですよね。ミックの主観が強すぎることが問題……?
うまく言い表せませんが、この部分で詰まってしまいました。
とうとうミナの居場所が兄にばれてしまったという展開ですね。ピンチの予感がします。
【四話目】⌘第4話 ルクス教を毛嫌いする兄
「彼女の怯えと恐怖の元凶から」とありますが、“怯え”と“恐怖”は似た意味なので、どちらか一つで良いと思います。
兄の狂気を感じさせる振る舞いに緊張感が高まりますね。
この四話目まで、ミックのことを「彼」と表現している箇所が何度か見受けられますが、ミックにフォーカスした三人称一元視点である以上、ミックに「彼」という代名詞を使うのはおかしい気がします。ミックを「彼」と呼んでしまうと、視点が普通の三人称になり、誰から見たミックなのかと疑問を抱きます。
私は小説の知識が浅いので、“三人称一元視点で視点主に対して代名詞を用いることの善し悪し”の判断が付きませんが、読者の目線から見たときにそのように感じました。
わかる方がいたら是非教えてほしい……
「ミナのお兄さん?」に対して、ミナの体の動きだけで答えがわかるというのは良い表現ですね。
殺されたくなければ武器を持て。もはや教えなんかどうでもいいという信者たちの嘆きのようなものが心に刺さりますね。ミックの迷いも伝わってきます。
「ミックが人質になっているのか?」とありますが、これはミナの考えていることでしょうか? であれば、この部分だけ視点がミナに切り替わったということになりますが、何か意図があるのでしょうか。
今までミック視点で進めてきているので、急に他の人物の考えていること、つまり“ミックには知る由もないこと”が急に出てくると、読者の混乱を招きやすいと思います。
ついにミックが少年に手を出されましたね。私ならコノヤロー!! と反撃したくなりますが、ルクス教を信じるミックはどう出るのでしょう。
「少年は倒れたミックを尻目にさっさとこの場を離れようとしたが、ミックは床を這いつくばって、やっとのことで彼の足下に縋りついた」、この場面ですが、イメージができませんでした。
少年が「さっさと」離れようとしたのはわかります。こんなやつ(ミックなんか)ほっといて早く帰りたいと思うでしょう。しかしミックの方は「やっとのことで」少年に縋りつきます。しかも「床を這いつくばって」です。
速足で去ろうとする少年に対して、腹這いで追いつくのは無理があるように思います。途中で立ち止まってくれていたのならいけそうですけど、どのような状況だったのでしょうか。
その後に「そこまでしてようやく、少年は鬱陶しそうに足を止めた」とあるので、やはり二人の位置関係や移動速度がわかりません。
「縋る」というワードがミナにも使われていますが、短い間に「縋る」が頻出しているので、ミナの視線は別の表現に置き換えた方が良いかもしれません。
「兄に疎まれ、倦厭されながらも~」ですが、倦厭には“あきてうんざりする”という意味があります。しかし、少年のセリフからは逆にミナに執着しているように思えます。少年がミナを無理やり連れて行こうとするということは、“目の届くところに置いておきたい” or “離れてほしくない”と思っているからであり、遠ざけようとしているわけではないのではないでしょうか。
また、第4話を読んで気になったのが、「~した」や「~だった」で終わる文が多すぎるということです。
これは私の作品にも改善の余地があることなのですが、過去に起こったことの羅列に見え、日記や報告書を読んでいる気分になってしまいます。
過去形が連発すると読みづらくなることがあるため、単調にならない工夫が必要だと思います。
【五話目】⌘第5話 ユス教徒の襲撃
ユス教の容赦ない発砲。とてもルクス教とはわかりあえなさそうですね。
「ユス教徒はミックと父を見つけ、呆れたように言った。たった二人か、とでも思ったのかもしれない」とありますが、その後の『「聞いているのか。全員、出て来い」』と辻褄が合わない気がします。ミックはユス教徒が「たった二人か、とでも思ったのかもしれない」と思ったんですよね? それならば、「呆れたように言った」の時点でユス教徒はミックと父の二人だけしかいないことがわかっていそうです。なぜなら“呆れた”は意外なことに驚く様子を表すからです。
ユス教徒が、ミックと父、二人だけしかいないことに呆れたのに、その後でルクス教徒が何人いるか把握できていないようなセリフが出るのは変だと思います。
“たった二人なわけないだろうが、他も早く出てこい”という意味なのだとしたら、私は一度読んだだけでは理解できませんでした。私の読解力がないだけでしょうか……
ミックはルクス教の信者たちが教えを破らざるを得なかったことの意味をようやく理解したんですね。
ユス教のリーダーはユス教をかなり軽んじているように見えます。初めて登場したユス教徒が彼らなので、ユス教に対するイメージは完全に悪ですね。
「あたかも左腕を~」の表現、未知の痛みがミックを襲い、耐えきれない様子がよくわかる良い描写だと思います。
「あろうことかユス教徒たちの前で~」の「あろうことか」から、ミックがユス教徒に対して嫌悪感を抱いていることが伝わってきます。
リーダーがまさかの知り合い展開。物語に動きが出始めましたね。
今回は長くなるので三回にわけてレビューします。
パート1はここまでです! ありがとうございました!
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