レビュー作品

【第一回】 この罪は許されるのかと、呪いは問うた

 今回は、バルバルさん 様の「この罪は許されるのかと、呪いは問うた」をレビューします。


 作品はこちらです↓


 https://kakuyomu.jp/works/16817139557355487110



 それでは、読んでいきましょう! よろしくお願いします!


 

 ***



 タイトルを見た感じ、あまり平和なお話ではなさそうですね。ジャンルはホラーですから、きっと恐ろしいストーリーなのでしょうね。


 タグには「呪いのビデオ」とあります。この中から何か出てきそう……。


 紹介文にはあらすじしかなかったので省略しますが、どうやら予想通り何か出てくるようです。



 ***



【一話目】何故なら、罪とは……


 一話目と書きましたが、一話完結の作品です。


 エピソード名は誰かのセリフでしょうか。「罪とはどういうものか」を語りだすような雰囲気がありますね。その答えが何なのか、気になります。




 「鼓膜が揺れたわけではない」。いきなり素晴らしい表現ですね。目の前の存在は“私”にテレパシーのようなもので語りかけてきたのでしょう。音が聞こえてこなかったということを、振動がないと言い換えることで、臨場感が出ていると思います。


 最初の問にカギ括弧がないのはおそらく、音として認識できなかったからでしょう。



 “私”の反応、かなり薄いですね。それに落ち着きようが半端ないです。この状況に慣れているのでしょうか。


 部屋の時計やテレビから少し昔の話なのかとも思いましたが、「レトロな」とあるので、時代は現代で、“私”の趣味が古いという設定なのかなと思いました。



 女性の描写ですね。いかにもホラーに出てきそうな見た目ですね。なんか全体的に濡れてらっしゃる……

 血の気のない、まさに幽霊というイメージです。

 ここの表現ですが、「湿った」という言葉が短い間に二回出てくるので、二回目の「湿った」は違う表現に変えると、さらに不気味な容姿が伝わるのかなと思いました。


 “私”のセリフで「レトロな品を集めている」とありましたね。このセリフがあることで、時代はやはり現代であると再認識できるので良いと思います。

 そして、その趣味が災いして呪いのビデオまで収集してしまったんですね。

 これを一つのセリフにまとめていることで、説明くさくなることなく、“私”の人物像と今の状況がなんとなくわかってきました。



 女性視点(?)に変わりましたね。井戸から這い上がってきたんでしょうか。なんかそういう映画ありましたね。このビデオはそれと同じものなのでしょうか?

 「永い」と「長い」が出てきますが、前者は現実の時間的なことで、後者はテープの時間が長いということでしょうか。深読みしすぎ?



 再び“私”視点です。今のところ“私”が主人公だと思ってますが合ってるかな。


 今までの描写からなんとなくそうかなと考えていましたが、“私”は探偵のようですね。お気に入りは髪が伸びるといわれる人形。この部分から、“私”は呪いとか心霊的なものに対して肯定的であり、だから冒頭であんなに落ち着いていて、すっと受け入れることができたんでしょうね。それにしても冷静すぎる気がしますが、クールさがこの人物の売りということでしょうか。

 「拝見できていない」とありますが、“私”はレトロなコレクションに対して並々ならぬ敬意がある、という風に捉えました。もしそうなのであれば、集めた「レトロな物」を大切に扱うようなシーンがあれば、この「拝見」という言葉に重みが乗ってくるような気がします。


 「レトロな○○」という表現が何度か出てきましたが、これらがどのような見た目であるかがイメージしづらいですね。年代物であれば特徴的な見た目をしているはずです。わざわざ「レトロな」という言葉を使っているので、そこを別の言葉に置き換えてみるのもありだと思います。



 「肯定の意思を感じつつ、緑茶が完成する」、素晴らしい表現だと思います!

 言葉では聞こえないけれど、なんとなくYESと思ったんですね。そして、お茶の完成によってこれぐらいの間があったんだな、とイメージできます。



 探偵ってすごいですね……。相手の好きなお茶を当てちゃうのか……。

 相手は人間かもよくわからないですが、“私”は一流の探偵であることもさらっとわかりました。

 こういう、会話の中で人物や周りの環境を説明していくのは、とても大切なことだと私は考えています。地の文だけでの説明にならないことが、地味だけど読みやすさにつながると思います。


 呪い殺すって具体的にどうやるんだろう。ホラーに疎いのでちょっと気になりました笑



 「非常に難解だ」といいつつ、あと一歩で答えが出そうなんですね。さては勉強むずかしい~とかいいつつ、実はテストでいい点とるタイプですね?


 話が少しそれたのでもどします。


 「言葉に反して」というのは「ワクワク」という言葉にかかっていると思うのですが、直前の“私”のセリフからは「ワクワク」とは反していないような印象を受けました。むしろ、「ふむ、難しい」あたりからすでにワクワクしてそうだなと思いました。



 おばけ(?)相手に「お嬢さん」、紳士ですね。


 対する女性は今のところ立ったまま動いていないみたいですね。そして、また視点が女性へ。



 謎が多く出てきましたね。特に「私を殺した者達」。それから、自分が何者かわかっていない様子。どういうことなのか気になります。



 ここで「罪」がどういうものを指しているかがわかるんですね。だんだん盛り上がってきました。



 「私の死が再生されなくなった」、これはどういうことか、私なりに考えました。まず、ビデオテープである点、このことからこの女性が亡くなる場面が収録されているのかなと思いました。で、その場面を再生した人たちが呪われると。そんな想像をしました。



 最初は“私”も驚いてはいたんですね。冒頭の落ち着きようから驚きの感情を捨てた人なのかと思ってしまっていました。



 罪とはどういうものかの回答が得られましたね。この物語はただのホラーに見せかけて、実は、罪を犯した者とそれを許す者の関係性、そこからわかる「罪」というものの重さを訴える、非常に興味深いテーマを持っているんですね。



 ラストに差し掛かりました。


 あ、このビデオテープは依頼人から引き取ったものなんですね。そういえば紹介文にも最初に書かれていましたが、あの部分を最初に読んでいないと、話の流れがつかみにくい気がします。冒頭に持ってきてもいいのではないでしょうか。


 ただ、私の憶測ですが、女性のセリフ(?)を一番最初に持ってきたいという作者様の強い意志を感じたので難しいところですね。


 であれば、セリフ(?)のあとに、簡単にここまでに至った経緯を挟んでもいいのかなと思いました。あらすじというか、紹介文はなんとなく流す読者もいると思うし、ちゃんと読んだはずの私も失念していましたので、冒頭の説明がもう少しあれば入り込みやすいのかなと考えました。



 結局、ビデオがどういうものなのかがはっきりしないまま終わりましたね。これって何か元ネタがあるのでしょうか?

 私には「さて、呪いのビデオを~」から先がいまいちピンときませんでした。人形の伏線を回収したというのは分かるのですが、読解力がなくて申し訳ありません。良かったら教えてください……



 個人的には、あっと驚く展開がもう少しあるのかと期待してしまったのと、ビデオと殺された人たちの詳細が知りたかったので、すっきりしない感じがありました。



 ***



 総括です! この物語が一番に伝えたいことは「罪」とは何か、であると思うので、キャラクターの個性は薄めでも問題ないのかなと思いました。「罪」の概念を探偵とホラーな女性の会話の中で表現するというのは独自性のある構成だと感じました。

 ただ、文章がきれいで読みやすいだけに、更なる展開、謎が謎のままであるといった、“これから面白くなりそうなのに!”や“もう終わっちゃうの?”というわだかまりを抱きました。続編があるなら読みたい!



 星は2・5で、繰り上げて3をつけました!



 「ここはこうじゃないか」という部分がありましたらコメントでお願いします。

 また、「ここの部分に触れてほしかった」などありましたら、作者様もコメントしていただけると助かります。その場合は補足します。




 今回は以上になります! ありがとうございました!




 今回読ませていただいた作品、3,220文字で私のレビューの方が文字数多いんですけど、これちょっと張り切りすぎた……?

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