「信じられない」

 彼は頭を上げた。青い空が彼の疲れた脳みそに染みるようだった。彼はまた、自分を非難する奴らの方を向いた。奴らはまるでひどく空回りした正義感で、その貧相な自尊心を満たしているようであった。

 確かに人は死んだ、だがなんで俺が責められないといけないんだ?

 彼は自分をぶっとばした張本人であるプリウスと、その運転手(おそらく金持ちなのだろう)を睨んだ。プリウスの運転手は既に車の外へ出ていた。彼は少し歳をとっていて、なんとなく気が弱そうな人だった。彼はプルプルとその腕を彼の方へ持ち上げ、そして人指し指をピンと立てた。「信じられん」彼はそう言った。「何て奴だ」

 彼はもう我慢できそうになかった、プチンと何かが切れる音が聞こえた。理不尽なヘイトと、試験にはもう間に合わない、という事実が、彼の憎悪をまた一段と燃やすのだった。

「何言ってるんだ!」彼は怒りに任せ大きな声を出した。「悪いのはどう考えたって、こちらに突っ込んできたあなたの方じゃないですか!」

 プリウスの持ち主はわざとらしくため息をついた。そして車に寄りかかると、悟すような口調でこう言った。

「みんながあなたのことを悪いと思っています。あなたは私の走行を邪魔した上に、(自分自得とも言えますが)吹き飛んで、その勢いで一人の人間を死なせたのですから。あたり前のことじゃないですか」

 信じられないと彼は呟いた。もはや奴とこれ以上話しても時間の無駄とさえ思った。彼 はポケットから携帯電話を取り出し、警察署へ連絡した。

「事故が起きました。 いますぐこちらへ来てください ○○町の△△通りです」

 警察はやってきた。しかし、彼らもまた奴の肩を持つのであった。事態はさらに悪化した。 誰1人、マルの言うことを信じる人はいなかった。

「ダウビティス氏」ある大柄な警官が彼を呼んだ。彼は若く目がキラキラしていた。

「なぜあなたは嘘を付くのです?なぜあなたは言い訳をするのです?こちらにはもう明らかな証拠が揃ってるんですよ(五人の証人というね)。念のために言いますが、これはもう、罰金を払ってお終い、という話じゃないんです」 彼は満足気な様子で最後に「覚悟したほうがいいですよ」と言った。

「信じられない」と彼はもう一度つぶやいた。

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