ニルリティ/高木 瀾(らん) (3)

「なぁ、お前の妹と一緒だった、韓流アイドルもどきだけど……」

 朝食が終ってひなたの家に帰る途中、ひなたが、そんな事を言い出した。

 多分、光の事なんだろうが……。

「良く知らんが、あんな感じの女性アイドル居たっけ?」

「男の方のアイドルだよ」

「言われてみれば、そんな感じだな。で、何の話だ?」

「あいつの能力って何?」

「いわゆる『邪気』……人間に有害な『気』『霊力』『魔力』のたぐいを、ほぼ無制限に浄化出来る。あとは、魔法的な方法では妨害不能な生命力の感知と生物の体温への干渉……って所かな?」

「いや、なら、昨日の『鬼』が現われたなら、あいつに任せりゃ……」

「『邪気』を無制限に浄化出来るのに、『邪気』そのものを検知出来ない。あと、『邪気』を浄化した時に、高熱と衝撃波が出る。早い話が爆発が起きる。ついでに『邪気』がデカけりゃデカいほど副次的に出る熱と衝撃波もデカくなる」

「ど〜ゆ〜理屈か判んね〜けど……何だよ、その規格外チートかクソ使えねえか判んねえ能力は?」

「どっちみち、町中では迂闊に使えん。町の一区画、丸ごと焼け野原にするのもむなしぐらいの異常事態を除いてな……」

「何で、そんな能力……」

「訓練で身に付けた能力じゃない。神様みたいなモノが一方的に与えた力だ……。そして、旧約聖書の預言者や、イスラム教の開祖のムハンマドみたいに、神に選ばれた者は……最初は、拒絶しようとするが、神様が絶対に叶えてくれない願いは『貴方の代理人になんてなりたくありません』だ」

「お前、旧約聖書とかコーランとか、ちゃんと読んでんの?」

「旧約聖書の方は……有名な箇所は……ざっと……。コーランの方は日本語の解説書を新書で2〜3冊ほど。基礎教養として学んだけど……半分以上、覚えてない」

「あと、お前の妹が着てた格好いい革ジャンだけど、どこで買ったの……」

 やれやれ……ちょっと嫌な思い出が脳裏に浮んでしまった。

「形見だ。死んだ仲間の……。同じの欲しいなら『工房』に発注しろ。『仕事着』じゃなくて普段着に使うなら、『給料』から天引きで」

「あ……そ……。待て、仕事着?」

「普通の革ジャンじゃない。ある程度は防弾・防刃効果が有る」

 だが……馬鹿話をしてる内に……少し、モヤモヤしていた考えが、段々とまとまってきた。

 生命力を感知する能力……生物の体温……そして……。

 そして、空を見ると……昨日とはうって変った快晴……。

「ちょっと『拠点』に戻る。少し付き合ってもらっていいか?『専門家』であるお前の意見が必要になるかも知れん」

「へっ?」

「昨日の私の『護国軍鬼』とお前の『水城みずき』のカメラ映像を……見直して確認してみたい事が有る」

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