アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (4)

 大手チェーンじゃない……あまりお洒落じゃない……五〇過ぎのおっちゃんが店長をやってる昔ながらの喫茶店。

 そんな感じの店に朝飯を食いに来てみれば……。

「おはよう」

「おはよう」

 瀾と喧嘩中の妹が居た。

 双子だそうだが、声以外は全然似てない。

 例えば、瀾は癖毛で黒っぽい色の髪。妹の方は直毛で……地毛だけど学校で不条理校則が罷り通ってた暗黒時代には「黒く染めろ」と言われそうな茶髪の直毛。

「あんたが、私がやってたウチの家事やってんの? なら、私は当分帰らなくても大丈夫だな」

「何言ってるッ⁉」

 そう答えたのは……瀾の妹の連れの女。

 あたしらより少し齢上ぐらい。

 いわゆる「イケメン女子」だけど……瀾が自然な感じで「男っぽい格好や仕草」をやってるのに対して、こいつは、妙に「作り物」っぽい感じの「男っぽい格好や仕草」。

「光さん、何で、顔真っ赤にしてんの?」

「いや、それは、その」

「席……離れたとこの方がいいか?」

「好きにしろ」

「ところで、お前の妹の連れ……誰?」

「妹のゲーム仲間。西南大学の学生。あと、ウチの妹やレナの同類」

「最後に、サラっと凄い事言わなかったか? あ〜、すいません、モーニングのAセット。飲み物はホットのカフェオレ」

「じゃ、私は、Bセットで、ホットのロイヤルミルクティー」

「あと、あれ、どう見てもさ……」

「ウチの妹は、その手の事はクソにぶい。他人の恋話こいばなは大好きなのに、自分が誰かに惚れられる可能性は完全にこれっぽっちも考えた事さえない。相手が男でも女でも」

 そして、あたしらは注文のモーニングセットが届くと、黙々と食べ……。

「おい」

 その途中に、瀾の妹の連れがやって来た。

「昨日の件だけど……」

「たまたま、事が起きた時に、あんたの手が空いてりゃありがたいけど……あんたの能力ちからは、強力だけど、使い勝手がクソ悪いだろ」

「……まぁ、そうだけどさ……」

「今、なるべく、誰でも対処出来る手を考えてる」

「巧く行くのか?」

「正直……怪獣映画みたいには、いかんさ……」

 まぁ、そりゃ、そうだ。

 怪獣が現われりゃ、遠くからでも判るが……相手は人間サイズ。

 しかも……。

 こんなパターンの怪獣映画なんて有ったか?

 をブッ殺す話なんて……。

「まぁ、可能ならでいいんで……いつでも、久留米こっちに来れるようにしておいてくれ」

 瀾は、自分の妹に片思いてるらしい奴に、そう告げた。

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