第二章:極悪対決
アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (1)
「オン・バサラ・クシャ・アランジャ・ウン・ソワカ……オン・マリシエイ・ソワカ……オン・アウン・ラケン・ソワカ」
まず、あたしの守護尊である金剛蔵王権現……と言っても、あたしの流派で「守護尊」とは、気・霊力のタイプや得意な術を一言で言い表す「記号」であり、本当に神や仏が存在するかは不可知論に近いが……の真言を唱え、周囲の邪気や悪霊・魔物を追い払い、自分の周囲に摩利支天を「本尊」とする隠形と、四天王が「本尊」の防御用の二重の結界を張る。
続いて、護法童子……陰陽道でいう「式神」、西洋魔術でいう「使い魔」……を、テイザーガンを食って倒れてる河童の1匹に取り憑かせ……更に別の1匹に取り憑かせる。
言わば、あたしと護法童子の間の「通信経路」みたいなモノは2匹の河童を経由する事になる……。
この、とんでもねえ心霊現象を起こしてる「何か」を探れば……当然、その「何か」にも気付かれる可能性が高い。
でも、この河童どもを経由すれば……巧くいけば、その「何か」は、自分を探ってる相手を河童どもだと勘違いしてくれる……可能性は有る。
あたしの放った護法童子は、周囲の「気」の流れを見極め……邪気がより濃い方に向かう。
やがて……見付かった。
梵字……無数の梵字。
どこか歪んでいるが……漢字や仮名で言うなら……楷書体。密教や修験道では、神仏などの象徴や真言・呪文を梵字で紙なんかに書く場合は「楷書」を使い、行書・草書なんかの「崩し字」は昔の坊さんの花押……要はサイン……などにしか使われない。
もちろん、これは「気配」を、あたしの脳が映像や音に「翻訳」してるモノだ。
相手の術式が良く見知ったモノなら、その術式の「気配」や「パターン」を、あたしの脳が……例えば、密教系・修験道系なら梵字に、神道系なら神代文字に、日蓮宗系なら髭題目に、西洋魔術ならカバラの記号やルーン文字や
そして、全く知らない術式や、我流や生まれ付きで魔法系・心霊系の能力を身に付けた奴や、
つまり……今回の件の「元凶」は……少なくとも、密教系・修験道系の人間……または
ん?
変だ。
この梵字の「癖」に覚えが……。
でも……。
見えない……。
無数の梵字は人型に成りつつ有るが……でも……。
力はバカデカい。
でも、こいつが……密教系・修験道系の術者だとしても……「守護尊」……気や霊力のタイプやら、得意な術やらが……何も判らない。
「ごわあッ‼」
向こうが、あたしの護法童子に気付いた。
あたしは、護法童子の髪の一部を相手に飛ばし……護法童子の「分身」が生まれるイメージを頭に思い描く……。
実は、これだけでも、かなりの集中力が必要だ。
多分だけど、漫画家とかイラストレーターが、絵を描き出す前に思い描く完成した絵のイメージよりも、遥かに鮮明かつ具体的なイメージだろう。
そして、護法童子の「感覚」をギリギリまで遮断。
飛行機か船のレーダーなんかで喩えるなら……他の「何か」が出してる電波は捉えても、こっちからは積極的にレーダー用の電波を出さないような感じだ。
そして……相手は……?
罠なのか……?
それとも……?
「しばらく、このまま、動かないで。ただし、残ってる霊力入りの銃弾を、いつでもあたしにブッ
意識を自分の体に戻したあたしは、周囲のレンジャー隊に指示。
「ちょ……ちょっと…‥どう言う事?」
「変だ……相手は……力そのものはバカデカいのに……
「何?」
「
あたしの護法童子の存在を察知した「何者か」は……あまりにも、あっさりと……駄目元で放った「囮」に引っ掛かりやがった。
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