ニルリティ/高木 瀾(らん) (1)

『気ぃ付けろ、近くに、この件の元凶が居る』

 狼男と交戦中に相棒から無線通信。

「どこだ?」

『多分、大通り……』

「な……? 私から見て0時の方向か?」

『ああ』

 胸部装甲を開き、余剰エネルギーを噴射し後退。

「お……おい、あたし置いて逃げる気かッ⁈」

 レンジャー隊の副隊長ブルーが叫ぶ。

「合図をしたら伏せろ。『アータヴァカ』、『魔法武器』を持ったまま、私のATV四輪バギーに乗れ」

『あたしのバイクじゃなくて?』

「説明は後だ」

『嫌な予感しかしねえが……了解Affirm

 相棒がATV四輪バギーに乗車したのを確認。

「『チタニウム・タイガー』、搭乗者による操作を一時OFF」

『やっぱり、嫌な予感が当たった……』

「伏せろッ‼ 全員だッ‼ なるべく身を低くッ‼」

 続いて、レンジャー隊に指示。

 狼男の爪がレンジャー隊の副隊長ブルーの頭上をかすめ……訳が判らないまま、他のレンジャー隊員も地面に伏せ……。

「『チタニウム・タイガー』、送信したターゲットに向かい突撃しろ。後部ロケット燃料1発分点火」

『想定の範囲内だけど……何考えてやがるッ⁉』

 相棒が乗ったATV四輪バギーが後部から火を吹きながら1人だけ突っ立っていた狼男に激突。

「余剰エネルギー噴射準備。背面、脚部後方。全開」

 続いて「鎧」の制御AIに指示を出す。

「うがああああッ⁉」

「うわああああ……」

 そのまま西鉄久留米駅前の大通りに出る直前……。

「しっかり掴まってろ……『チタニウム・タイガー』底部ピケット射出」

『無茶だッ‼』

 後方支援要員から、やや遅過ぎるが、当然の指摘。

『おい、何か、モニターにエラー出てるぞ』

 強制停止用のピケットを地面に撃ち込んだのに、ATV四輪バギーは停止していない。それでも、速度は落ちているが……。

 ATV四輪バギーの制御AIのエラーメッセージを「鎧」のモニタに転送させる。

 ロケット燃料で加速した状態で、強制停止用のピケットを射出した結果、ピケットが折れたようで……ピケットの射出機構も一部破損。

「『チタニウム・タイガー』、底部ピケット射出機構を強制除装」

 狼男は……警察が張ったらしい「立入禁止」の黄色いテープを破って、大通りに飛び出し……。

 どうやら、この通りの入口を見張っていたらしい一般警官が、唖然とした表情で空飛ぶ狼男を眺めていた。

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