第2話・憂鬱×悪魔
「ハア、永久追放処分か・・・」
重いため息を吐いた。
陰陽連は俺の人生であり、俺そのものといっても過言ではなかった。
当時超級陰陽師であった父と上級陰陽師であった母の間に生まれた俺は陰陽師としての才能に溢れていた。
言葉を覚えるより先に陰陽技を覚え、歩くよりも先に陰陽技を使って空を飛んだ。
自我が芽生えて体もある程度動かせれる3歳になった時から、その圧倒的な才能を見込まれて厳しい修練が始まり、5歳の頃には実際に悪しき妖怪や悪魔との戦闘を行った。
それから今に至るまでずっと修練と戦いに明け暮れてきた。
こなした任務は数知れず、滅した妖怪も悪魔も物の怪も数知れず。
青春どころか人生の全てを捧げてきた。
俺にとって陰陽連が全てであった。世界であったのだ。
その結果が永久追放処分だ。
「ハア」
ため息をつかずにはいられなかった。
「これからどうしようか・・・」
一人呟くが誰も答えてなんてくれない。当たり前の話だった。
「ハア、お腹減ったな。取り敢えずどっかで飯でも食うか」
重いため息を吐いてしまう。
適当なハンバーガーショップに入り、幾つかメニューを頼み、受け取ってから席に座る。
一人で山盛りになってるハンバーガーを食べる。
辺りを見るとチラホラと学生服を着た、同い年くらいの子が見える。
時計を見れば5時過ぎ、今日が平日であると考えれば妥当なものである。
「俺って義務教育すら受けてないな・・・」
誰にも聞こえないレベルの小さな声で呟いてしまった。
自分で自分が嫌になった。
永久追放処分をネチネチと根に持って、ずっと暗い気分に沈んでいる愚かな自分が。
愛する人すら守れずに、親友に庇われて、師匠に全てを託されて、文字通り死ぬ気で全てを賭けた結果が永久追放処分。
俺の人生とは何だったのかだろうか。
心に大きな大きな穴がぽっかりと開いた気分だった。
「ハア」
大きなため息がまた出てしまう。
ただひたすらに憂鬱な気分であった。
そんな時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴ
地面が大きく揺れた。
「何々、地震?」
「凄い揺れてる。一体何が起こったの?」
「皆、机の下に隠れるんだ」
俺以外の店の中にいる人は机の下に隠れた。
ただ、俺だけは隠れなかった。
否、最初は隠れようと思ったが、悪魔の気配を感じたのだ。
悪魔・・・人の悪感情や生命エネルギーを糧にする化け物、人知を超えた生命体であり、精神エネルギーによって出来ている存在。
その為物理的攻撃は一切効かず、陰陽師や僧侶、エクソシストといった精神エネルギーへの攻撃が出来る存在以外は何をしても絶対に倒せない最悪の存在。
そんな悪魔の気配を感じてしまったのだ。
このまま放置していても、いずれ陰陽連やエクソシストが滅すだろう。
ただ、その間に誰かが犠牲になる可能性はゼロではない。
俺は陰陽連を永久追放処分された身だ。
怪我も負ってるから満足に陰陽技も使えない。
悪魔の強さは分からないが、もし上級悪魔であれば負けて殺されるかもしれない。
中級悪魔でも場合によって死ぬ危険性がある。
それでも、それでも、悪魔がいると分かってるのに放置するなんて俺には出来なかった。
今まで陰陽師として人々を守ってきたプライドというのが俺にはあった。
それに何よりも、こんなところで一般人を見捨てて逃げたら天国にいるアイツらに笑われてしまう。
「行くか」
ため息をつくのはもう止めた。
「俺は、俺の名前は明星。元超級陰陽師にして、今は陰陽連から永久追放処分を受けた身、今はただの一般人だ。それでも悪魔程度倒して見せましょう」
俺は悪魔の気配のする方向へ走るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます