4 - 4 七花

 きぬよちゃん?

 ……えーっ、きぬよちゃん?


 きぬよちゃんに、会いたいの?

 えーっ。


 ……あのね、ママとか、はつねちゃんに、おこられちゃうよ? いいの?

 おこると、ママより、はつねちゃんのほうがこわいんだよ?


 ……そっか。


 きぬよちゃん、いつもあっちからくる。おにわのほうからきて、じいじのおへやにすわってる。きぬよちゃんは、朝くるよ。だからママにも、はつねちゃんにもないしょで、はな、はやおきしてじいじのおへやにいくんだ。


 きぬよちゃんはいいにおいがするの。おにいさんとおんなじぐらい、いいにおい。それにおうたがじょうず。はな、きぬよちゃんのおうたをきいてるとねむくなっちゃって、じいじのおへやでねちゃうんだけど、ママにも、はつねちゃんにもおこられたから、おうたをきいたらがんばってママのところにかえるの。


 おにいさん、どうしてきぬよちゃんのことしってるの?


 パパ?

 ……はな、パパきらい。

 だってパパ、へんだもん。

 りくちゃんのパパとか、ももちゃんのパパみたいなら、よかったのにな。だって、りくちゃんのパパはにちようびにこうえんにつれてってくれるんだよ。ももちゃんのパパはおはなしがとってもじょうずなの。いいなぁ。はなのパパは……おうちにかえってこないし。はなのこと、ちがうなまえでよぶし。


 はなのこと、ってよぶんだよ。

 へんだよ。きらい。


 おにいさん、パパとママと、はつねちゃんにひみつにしてくれる?


 きぬよちゃん、あかちゃんいなくなっちゃったんだって。だからさがしてるんだって。


 はなが、きぬよちゃんのあかちゃんだったらいいのに、ってないてた。


 はな、きぬよちゃんのあかちゃんになりたいな。

 だってきぬよちゃんはやさしくて、いいにおいがするし。ママみたいにおさけのにおい、しないし。はつねちゃんみたいにおおきいこえでおこらない。きぬよちゃんのこと、はな、すっごくすきだなぁ。


 きぬよちゃんにあいたいなぁ。

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