第2話 姉を舞踏会に 2
母が持ち帰った舞踏会の話で、姉二人は、とても喜んでドレスの話を相談し始めた。
「ヘーデルは、赤い色が似あうから薔薇をあしらったドレスが良いんじゃない?」
「カーラは、黄色かしら?」
「シンデレラは、やっぱり青が似合いそう。ね?カーラそう思わない。」
「ちょっと待って、みんな…。ドレスの色とか嬉しくて相談するのは、私もとても嬉しいんだけど、忘れてることがあると思うの。」
私のこの言葉で、義母と姉二人は、私の顔を見てキョトンとしたが、執事のダニエルだけは、後ろで『うんうん』と頷いてから答えた。
「シンデレラお嬢様は、まだ、15歳でございます。奥様…。」
アッと言うの悲鳴に近い声が出た後、3人は、残念そうに私の顔を見返した。
「ごめんなさいシンデレラ…。なんてことかしら…。貴方が一緒に行けないなんて。」
「お母さま、良いのよ。この国の法律なんだから。それに、まだ婚活なんて考えられないし。それよりヘーデルやカーラにとっては、素晴らしい機会なんですもの!!ちゃんと準備しなくちゃ。」
「あ~なんて、優しい。本当に良い子に育ってくれたわ。私の自慢の娘よ貴方は。」
こんな会話のあった次の日に私は、魔法学校に行くついでに、街で今のドレスの流行を見て、姉たちに似あうドレスの仕立て屋を探して歩いた。けれど、街は、すでに国中の貴族の娘たちが新しいドレスを作ろうと殺到していて、あまり費用の出せない貴族は門前払いの様な状態だった。
「困ったわ。これじゃ、新しいドレスなんてとても無理ね…。帰ってからなんて言おうかしら。」
そんな独り言をぼやきながら家路についた私は、やはり、正直に街での状況を夕食を取りながら義母や姉たちに話すことにした。
「で、どうだった?シンデレラ。私たちでも頼めそうな仕立て屋は、あった?」
「ヘーデル、カーラ…。正直に言うね。学校の帰りに街まで行って来たわ。でも…。有名なハンナの店は、長蛇の列が出来てて、少し先の、フリルの店は、高級すぎるでしょ?それから…他も当たったんだけど生地があまりない上に、費用を出せない貴族が断られて怒って帰るのを見てしまったの。」
この言葉に義母も姉たちもがっかりして食事の手が止まってしまった。
「それでね…私考えたんだけど…。ヘーデルはレース編みが得意でしょ。カーラは刺繍が得意だし、時間は、限られてるけど、それと、私の亡くなったお母さまのドレスがあるからそれでみんなで仕立て直したらどうかしら?」
「ダメよ。シンデレラ。あのドレスは、貴方に残していった物よ。それを、貴方が着る前に私たちが着るなんて出来ないわ。」
義母が首を振りながらそう言うと姉たちも頷いた。
「良いのよ。こんなに素敵に育ててくれたのは、お母さまやヘーデルやカーラよ!!私が良いって言うんだから。それにずっとおいて置くのも勿体ないし、着てもらえる方が私もうれしいんだから。」
3人を説得した私は、1か月後の舞踏会に向けて、家族でドレス制作に奮闘する事になった。そして、何とか出来上がった3着のドレスだったが何か物足りない。
誰もがそう思っていたが自作でこれだけできれば上等だと心の中にそれぞれその言葉をしまい込んで舞踏会の夜を迎えることになった。
3人はドレスと一番良いアクセサリーを身に着けて準備にいそしんでいた。
「さあ。みんな準備は良い?」
母の声にヘーデルとカーラが振り返る。私も3人を見送るため馬車の前までやって来た。そして、3人を見て思わずつぶやいてしまった。
「やっぱり…何か物足りない…。」
「もういいわよ。シンデレラ。今日まで良く頑張ってくれたんだもの。じゃあ行ってくるわ。ゆっくり休むのよ。」
そう義母に言われたものの、私は、思わず3人を引き留めた。
「やっぱり!!ちょっと待って!!今日は、大事な日だもの!!」
「どうしたの?何?」
3人が振り返ってこっちを見た瞬間、私は、思わずやってしまった。そう、3人に魔法をかけてしまったのだ。
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