シンデレラは魔女でした
華楓月涼
第1話 姉を舞踏会に 1
やってしまった!!まだ、人に魔法を使ったことなんてないのに…。
でもでも、こんな物足らないまま、行かせるなんて出来ない!!ごめんなさい。
私の拙い魔法で、時間制限あると思うけど…。でも絶対今より、素敵に見えるはず。
「いってらっしゃい。お母さま。ヘーデル。カーラ。楽しんできてね。素敵な舞踏会を…。」
舞踏会当日から遡る。
5歳の時に母が亡くなり、その1年後に父は、新しい母と姉を2人連れて帰って来た。 その父も10歳の時に貿易の仕事だと言って、なかなか家に帰ることはなくなっていた。
父が帰って来た時は、色々なお土産を買って来てくれたが、新しい母は、少し寂しそうにしていたのを覚えている。そんな時、父が決まって言うのは、「お前たちがいるから頑張れるんだよ」という言葉だった。
父がいない間、義母は、姉と共に分け隔てなく育ててくれた。そして、父の事業が順調な間は、使用人も多く屋敷の管理を心配する必要もなかったが、ある日を境に父の仕送りが途絶え父の消息も不明になった。
「お母さま・・・お父様からの連絡は、まだ来ないのですか?」
「ええ。これから、どうしたら良いのかしら?使用人に支払う給与もあるし、この屋敷を維持するにも・・・。執事のダニエルにお父様の状況を調べてもらっているから、もう少し待つしかないわね。良い子ねシンデレラ、ヘーデルとカーラも心配しないで。」
そんな会話をした1週間後、父の船が海賊に襲われて難破したという連絡を執事が持って帰って来た。
「奥様・・・残念ですがご遺体の捜索も打ち切られた様です。ご主人様の資産も船と共に・・・。」
「共同経営者の方は?どうなったの。」
「それが・・・ご主人様は、騙されてその方に資産の半分を取られた様で、それが発覚して船で戻られる途中に難破したようです。」
「それなら、何も残っていない…。あ~なんてこと…。私は領地経営もまともにしたこともないのに。」
父の死後、義母は、全ての使用人を解雇して、執事のダニエルだけを残して領地経営を学び、何とか屋敷を維持する事は出来た。それが私が12歳の時である。それから、3年が過ぎようとしていた。
「シンデレラ!!シンデレラ!!どこに行ったの?」
「ヘーデル。ここよ。鶏が卵を10個も生んでくれてるわ。」
「また、鶏小屋にいるの?」
「また?鶏たちが私たちのおなかを満たしてくれる卵産んでくれているのに感謝しなくちゃ。また、なんて言わないで。それより、カーラは?」
「ああ。カーラは、貴方がいないからスープを必死でかき混ぜてるわ。」
「そうなの?お母さまがスープを作ってたんじゃ?」
「お母さまに家事は無理よ。分かってるでしょ。すぐ、焦がすんだからパンも黒焦げにしちゃうし・・・。ダニエルさんと一緒に仕事に出かけたわ。」
「お母さま・・・私のせいで再婚も出来ないわね。」
「シンデレラったらそんな事言うもんじゃないわ。お母さまは、貴方も大切だっていつも言っているじゃない。それに、貴方がいなければ、この屋敷は、ゴミだらけよ!!」
「魔法で掃除をするぐらいで褒めなくてもいいわよヘーデル。これくらい役に立たなくちゃね。」
私の魔力は、5歳で実母が亡くなった時に発動した。
もともと、他国生まれの母は、かなり強い魔力があり、魔法学校にも通っていたので、私がその力を受け継いでいても当たり前の様に思われるが、この国は、魔法石が採掘されてその力で国を守っている為、魔法石に魔力が反発して魔力を持つ子は夭折することがほとんどだった。その為、魔力を持った人は数少なく珍しい存在なのだ。
「私も貴方のように魔法が使えたら、もっと役に立てるのに…。」
「そんな風に言わないで。ヘーデルは、私の大切なお姉さまよ。優しくて勇気もあって。きっと、素敵な殿方に巡り合えて、いい結婚もできるわ。あっそうそう。明日の魔法学校の時に街でヘーデルのレースのハンカチを売ってくるわ!丁度出来てたんじゃなかった?」
「うん。5枚ほど。」
「良かった。ヘーデルのハンカチは人気があるから高く売れるんだから!!」
そんな他愛もない会話をしながらスープを混ぜているカーラの元に向かっている時だった。丘の下を急ぎで帰ってくる義母を乗せた馬車が見えた。
「なんだか…。いつもより急いでるように見えない?ヘーデル。」
「そうね~。確かに…。何かあったのかしら?」
馬車がつくや否や義母が飛び出してきて、私たちを抱えて歓喜の声で話し始めた。
「聞いてちょうだい!!もうすぐ都城で舞踏会が開かれるわ!!久しぶりの舞踏会よ~。」
「あ~王子様がご成婚なさるんでしたね。そう言えば魔法学校で言ってましたよ。でも、どうして?お母さまがそんなにお喜びに?」
喜んで顔を紅潮させている義母を尻目に、私は、全く関係ないかのように答えた。
「何言ってるの!!国中の貴族の娘が招待されるのよ!!貴方たちも参加できるのよ~。」
この時、義母はすっかり、私の年齢を忘れていた。私は15歳で舞踏会に行けるのは16歳からだということを…。
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